とある老人ホームの資料を目にする機会があった。
入居者の男女比率は女性が多く、高齢になればなるほど圧倒的な差となる。
妻は夫に先立たれてから25年生きながらえ、夫は妻に先立たれると5年ももたない。
会議の場、隣席の初老男性がボソリと言った。
数字が如実に物語る。
もしわたしたち夫婦が揃って施設の世話になったとしても、わたしが先立つことは一目瞭然。
そして残された数字に、遠い将来の家内の姿が重なって見える。
どれだけ元気であろうがいつか老い、おいとま前の支度の時間がやってくる。
一人になったその姿を思うとネガティブな思いに沈潜せざるを得ないが、ふいに思考の袋小路の小窓が開いて、そこに凛々しく逞しい息子二人の姿がのぞき見えた。
沈潜から一気に浮上。
この二人がいるから大丈夫。
本郷猛と一文字隼人、すなわち仮面ライダー1号と2号が揃って控えているようなものである。
彼らが家内に寂しい思いをさせるはずがない。
その確信とともに、胸塞ぐような遠い未来の光景はフェイドアウトしていった。
が、その一方、いつか別れのときが訪れるのだということをそれら数字が突きつけてくる。
なんとはかないことだろう。
いまこうして皆で揃って過ごせる奇跡を噛み締めたいような思いとなった。