夏である。
頭のなかの小見出しはいま取り組む仕事で占められるが、そこに旅情が紛れ込む。
気温上がれば上がるほど旅情がはしゃいで思いのなかを飛び回る。
日差し強く照りつける日曜の午後。
ああ、と旅の空想にひとときひたる。
今年はどこへも行かない。
そう早くから決めていたので予約もしておらず予定は白紙。
その白紙をフィールドに、旅情が縦横無尽に駆け回る。
2018年の夏は後にも先にも一回こっきり。
それを白紙のまま捨て置くなんてもの悲しい。
これほど仕事しているのである。
夏くらい旅に出てもいいではないか。
心はそう叫ぶが、そこに一人の男子の面影が浮かぶ。
来るべき春に向け彼はいまトンネルのなかを這って進んでいる。
それを横目に浮かれて遊ぶなど陽気なキリギリスにだってできはしないことだろう。
水は低きに流れ人は易きに流れる。
浮かれ気分は一気に加速し乗り移る。
子どもであれば尚更、浮かれ気分の急襲に抗する術などない。
肝心要で遊び呆ける親の罪過は子に影を落とす。
やはりこの夏はぐっと堪えるべきなのだろう。
夏は何度でもやってくる。
たまにこんな夏があるからこそ夏の魅力が倍増しになる。
静かに地味に。
今夏は這って進む日常に寄り添うことになる。