夜半から雨が降り続き、明け方には近畿各地に大雨警報が発令された。
梅雨前線が日本列島上空に居座って雨の弱まる気配が全くない。
河川の氾濫が懸念され、日中には役所のクルマが川沿いのエリアを走って避難を勧告して回った。
そんな記録的豪雨となった7月5日木曜日。
やすもと内科クリニック開院一周年を祝う集いが催された。
会場は日本橋にある杓子屋。
場所は分かりにくいが、その美味しさは誰にとっても分かりやすい。
名店である。
午後6時42分。
わたしは地下鉄日本橋駅に到着した。
地上へ続く階段が人でひしめき合っていてなかなか前へと進めない。
ほぼすべてが外国人観光客であった。
強い雨にたじろぐからだろうか。
出口付近で彼らの足がことごとく止まって、あたかもクルマが渋滞するような要領で階段がつかえはじめているのだった。
やっとのことで通りに出て、ツーリストの人波に混ざって歩を進める。
路面に水あふれ、四方八方から放水されるような雨であるから、着替えたばかりの服が瞬く間にずぶ濡れになった。
時間に余裕あったはずが雨に進路を阻まれ、杓子屋の引き戸を開けたのは定刻7時。
5分の道のりに15分も要したことになる。
幹事であるフォーユー相良さんがすでに待機しており横に吹田の森先生もいらっしゃった。
皆を待つ間、カウンターに並んでまずは一杯と相成った。
と、今夜の主役である安本先生がお見えになったので、揃って二階の座敷へと移動した。
まもなく長谷先生、田中院長が現れ、不妊治療で名高い吹田の中村先生、そして、じゃんさん、氏野先生が姿を見せた。
やや遅れて天六のいんちょとカネちゃんが揃って登場し、鷲尾先生が続き、しんがりは岸和田からお越しの谷口先生。
美味しい料理とお酒を分け合って、実に楽しく時間が過ぎた。
さすが宝塚の良心。
安本先生は内祝いの品を持参されていた。
清荒神名物、大阪屋本舗の佃煮を参加者一人一人に配る様子に、安本先生の実直な人柄が表れ出ていた。
スタッフに好かれ慕われ、患者さんから絶大な信頼を置かれる安本先生である。
わたしも当然そうだが、安本先生に対しては安心しきって誰だって心許して懐いてしまう。
真摯向き合ってくれる誠実さと人をあたたかく包む懐の深さがにじみ出ていて、だからこそ、安本先生の顔を見ればほっとしたような気持ちになれるのだろう。
まるで大船に乗ったかのよう、やすもと内科クリニックの心やすらぐ雰囲気がうかがい知れるというものだ。
夜11時、杓子屋が暖簾となって会はお開きとなった。
帰る方向が同じなので、わたしは長谷先生、鷲尾先生、森先生が乗るクルマに同乗させてもらって長谷先生のチケットの恩恵に与った。
おそらくこの豪雨の夜、電車で帰るのは至難であっただろうと思うので助かった。