遠方からの来客があって食事に招待するという。
善道がまずは候補にあがって家内は予約の電話を入れた。
が、8月はほぼ全席埋まっているとのことだった。
天六のいんちょの友人だと言ったところでやはり状況は変わらない。
こんなときは五鉄に限る。
料理のレベルが高く美味しく、そしてまま席がある。
客人もきっと満足いくはずである。
はじめて五鉄を訪れたのは駆け出しの頃。
遊戯業界の事業主に連れられた。
世にはこんな美味しいものがあるのかと驚いた。
それで家内を連れて再訪し、東京の友だちが遊びに来たときにも訪れた。
そのうち岡本君も五鉄の常連だと分かって一緒に何度か足を運んだ。
付き合う人のほとんどが事業主ばかりだからだろう。
世には美味しい店が他にも山ほどあるのだと知ることになった。
いい店と出合うとまた行きたい、当然そうなる。
あたり見回して、そこにいるのは決まって女房。
だから二度目以降は家内を伴うことになる。
子らにはまだまだ早すぎる。
大人の労苦を知らぬうちに味をしめれば間違いなく骨抜きになる。
育って後の楽しみにとっておくのが賢明だろう。
外食もいいがそれはたまにするからいいのであって、家のご飯が基本であるべきだろう。
昨日夕飯はさざえご飯にかぼちゃのチヂミに魚の煮付け。
朝はひじきに豆腐のベーコン巻き、そしてかぼちゃのそぼろ煮。
栄養あって身体にもいい。
日頃は質素に食べて過ごして、機会があれば外に出る。
ああ、ほうばに行きたい。
家内はそう言うが予約はラクダが針の穴を通るより難しい。
真正直に電話するのも見当違いに思えて気後れする。
天六いんちょの背に隠れ様子を見守るくらいしか打つ手はない。
地に足つけて歩んでいれば、ひょっこり願いが叶うこともあるだろう。
すべて一度に実現するより少しずつであった方が長く楽しい。
気長に待とう。