午後8時、駅を降り線路伝いに歩きながら後方の空を見上げる。
途中何度か立ち止まりその度後ろの人がつかえた。
奇行めいた行動であったが、ただわたしは火星を探していただけだった。
金星は進路方面、燦々と輝く姿が真西に見える。
その東隣、木星もはっきり見えて、遠く土星も視界に捉えることができた。
東の空に目を凝らすが、火星は見つからない。
御出座しはまだのようだった。
家に帰る。
家内は不在、家には二男だけがいた。
ふれあい夏祭りが土曜日に迫っていて家内はたこせん兼ヨーヨー担当。
近所の人らと自治会館で現在ヨーヨーづくりの真っ最中だった。
冷蔵庫にあったチャーシューサラダをつまみにプレミアモルツを飲み時間が過ぎるのを待つ。
まもなく時刻は8時45分。
そろそろだろうと見計らって、二男を伴いベランダに出た。
生暖かい海風がこちらまで届いてさほど暑くない。
南の夜空に二人して目を走らせる。
果たして南東に鮮やか赤に輝く火星を目にすることができた。
西へと視線を動かす。
土星があって、明るい光放つ木星も見えるが、今度は金星がお役御免、西の地平へと近接しベランダからその姿を捉えることはできなかった。
火星、土星、木星、金星が揃い踏みする空のシーンを見逃してしまったが、二男としばらくそこにとどまり空を見上げ続けた。
火星より高い場所にアルタイル、土星と木星の間にはアンタレスが瞬いて見えた。
それだけ揃えば星空観賞としては十分だった。
たまに星を眺めるのもいいものだ。
小さく縮まりがちな日常のサイズ観がリセットされて、晴れ晴れ広大な無私にひたることができる。
子らが小さい頃は一緒に虫取りし夜は星を眺めた。
いろいろな場面が目に浮かぶが、遠い昔のことのように思える。
久々に二男と夜空を眺めて感慨一入。
背はとうに彼の方がわたしを上回っている。