夏休みの最終日、うなぎを買って帰ると二男に約束していたが、それを思い出したのは家が間近になってからだった。
金曜の夕刻、いまさら戻る気力などなく、第一、目当ての店はとっくに閉まっている。
やむなく、駅前のコープをのぞくことにした。
パックに入った大ぶりのうなぎが目に入る。
産地は鹿児島大隅半島とある。
兄弟分で二尾買い求め、わたしは帰宅した。
二男はうなぎを楽しみにしていた。
だからわたしの帰りを待ちわびていたし、率先してご飯を炊く手伝いまでしていた。
夕飯の支度が整い食卓に集合。
わたしにはもやしとおからのサラダ、それに、焼いたさわらが出された。
二男にとっては、さあ、うなぎ。
二男は丼に顔埋めるようにするが、すぐその手が止まった。
いつもと違う。
彼はそう言った。
そもそもうなぎには一家言ある二男である。
日本各地、聞こえ高い名店の逸品を食してきた。
炭で焼き上げいつだってふっくら香ばしい名店川繁の味とは異なる。
そう気づかぬはずがなかった。
それでもうなぎはうなぎ。
不味い訳ではないので残さず完食してくれた。
次は川繁のものを買って帰ってくるよ、わたしは彼に誓うことになった。
兄貴の方は9時を回って帰宅した。
夜食がうなぎだと知って、まじで、とニヤけて大いに喜んだ。
そして一切手が止まることなく、うまい、うまいと連呼しつつ都合3杯のご飯をうなぎとともに平らげた。
ひとり暮らししたら毎日うなぎを食べる、そんな抱負すら述べていたので、スーパーであろうがなんであろうが、うなぎであれば何でも構わないということなのだろう。
その単純さが清々しい。
明けて9月1日。
小雨降るなか地元神社で家内とともに手を合わせ、我が子を巡るそんなうなぎ談義で盛り上がった。