似たような日が続いて変化がないとますます時間の流れが似通っていく。
急に肌寒くなったにもかかわらず昼夜薄着で過ごしたからだろう。
体調思わしくなくこの日も早めに引き上げることにした。
今夜はどこかで食事しよう。
そう家内と話していたが、その約束は反故にした。
少し寒けがする。
そうメールすると夕飯は鍋にするという。
それで帰途、食材を選ぶことにした。
運良く商店街の魚屋で肉付きのいいとらふぐを見つけることができた。
これで鍋のメインは決まりだった。
例のごとく中トロも視界に入ってそれも追加した。
その足で白ワインを選び、家内の指示通りスーパーに寄って豆腐やら薄揚げやらも調達した。
鍋の準備は整った。
夕飯は家内と二人。
中トロを皮切りに食べ始めたが、これが結構うまかった。
これほどうまいと家内は独り占めにせず自分の分を残して子らの分にする。
とてもわたしには真似できない。
鍋の湯がぐつぐつ沸いて、いよいよてっちりのお出まし。
皮を手始めにし白身にかぶりつく。
ひろたのポン酢がふぐのうまさをいや増しにし、向かい合う顔はともに笑顔になった。
出汁がいいので、白菜も豆腐もかなりおいしい。
やはり世界最高峰の美味の座に君臨するのはふぐを措いて他にないだろう。
それがわたしたち夫婦の結論だった。
仕上げの雑炊にかかろうとするとき、二男が戻った。
彼がその大半を平らげて、その様子を眺めてわたしたちは微笑んだ。
食後は家内と映画鑑賞。
選んだDVDは『しあわせの絵の具』。
夫婦で見入って2時間があっという間だった。
一人で観れば咽び泣くに違いなかったが、横に家内がいたので涙をこらえた。
その切ない問いかけに、最期の最期、いつかは行き着く。
後先のどちらの側になっても、確信を持って強く頷けるよう心しておきたい。
映画のラストに心揺さぶられ、ただただそう思った。
夫婦で観るべき映画だと言えるだろう。