日曜の夕飯は寿司割烹もり。
家内と二人カウンターに腰掛けた。
石川県のなんとかという冷酒がとても美味しい。
夫婦で注ぎ合い、ひとつひとつ差し出される寿司を心静かに味わった。
寿司も申し分ない。
よく仕込まれた上質なネタと雲井窯で炊いた赤酢のシャリが互い引き立てあって見事な味わいを醸し出している。
おいしいものを食べてほろ酔いになれば感謝の言葉も口をつく。
その昔、坪谷という占い師にみてもらったことがあった。
右も左も分からぬような駆け出しの頃である。
そこで言われた。
高い能力が備わっているのであなたはこの先ずっと大丈夫。
そして奥さんは、善の人。
だからお宅の家は先々永く安泰が続く。
その言葉で安心し地に足が着いたような気がした。
人間なんて単純。
言葉ひとつで様変わりする。
だからわたしは子と話すときもいいところにだけ着目し言葉を発する。
君はいつか凄い人間になる。
わたしは心からそう思い、子らもそう思うだろうから必ずいつかそうなる。
家内についても、確かに言われてみれば善の人。
善に焦点が当たるからますますもって善の人になっていく。
寿司を食べ終え帰宅する。
途中、スーパーに寄って子らの食材を調達する。
家内にかかれば何を選ぶにせよ子らが優先。
子らが喜ぶと思えば、単なる日常の買物も楽しい行為になっていく。
すでに二人の息子はそれぞれ帰宅していた。
模試が会心の出来であったという長男。
部活仲間と『クワイエット・プレイス』を観てきたという二男。
アイスを食べつつ彼らの話に耳を傾けた。
そして一夜明けて、月曜日。
以前であれば、日曜終盤から仕事のことが頭を飛び交い、明け方には居ても立っても居られず仕事場に駆けつけた。
特異な精神状態とも言えて、心身への負荷は相当なものだっただろう。
ここ最近、月曜への入り方を変えてみた。
月曜朝はゆっくり起きる。
そう決めると不思議なことに仕事のことが頭を駆け巡らなくなった。
だから日曜も心穏やか過ごすことができる。
子らを送り出し、呼吸ゆるやか、ゆったり動いて身支度を整える。
朝食を食べコーヒーを飲み新聞に目を通し家内と話す。
そのうちだんだん元気ハツラツ、気分爽快、仕事に向かおうとの強い気持ちが沸いて出てくる。
今朝の朝食はテールスープの出汁で作った素麺。
我が家はいつだって朝から超絶おいしい。
食後、家内がペパーミントのアロマを頭から首そして肩にかけて塗布してくれる。
リングに上る前のボクサーみたいなもの。
朝の澄んだ空気を胸深く吸い込むごと、朝の活気に心身が同化していった。
緩んで十分にタメができ、明るく晴れ渡る秋空のもと、弾むようなステップ踏んでわたしは仕事場に向かった。