明日の日曜も天気がいい。
どこに出かけよう。
手製のベトナム風春巻をパクチーソースで味わい家内と話し合っていると、長男が口を挟んできた。
近頃自習室が混んでいるので事務所を使いたい。
自習の監督をしてかつ彼の質問に対応できるのはわたしをおいて他にはない。
思い描いていた晴れの行楽はその瞬間に消え去った。
しかしそれがうちのスタンダード。
休日であろうと何であろうと子らが優先であり、そのため地味に静かに過ごす仕様になっている。
明けて朝5時半。
二男と約束していたとおりクルマ走らせ、まずはこの日の課題の一番目、朝風呂に向かった。
まだ暗いうちから湯につかり温泉旅行でもしているような気になるが、長男の相手もせねばならずそうそうゆっくりもしていられない。
塾の自習室で勉強するという二男を家に送り、その足で長男を乗せ事務所に向かった。
休日の午前、やる気はあってもカラダのどこかに休み気分が潜んでいる。
こんなときはスパイス効いたカレーとカフェインたっぷりのコーヒーが効果てきめん。
だから道中、カレーを食べてコーヒーを買った。
これまた行楽気分に浸りそうになるが頭を切り替え、よそ見せぬよう事務所にまっすぐ向かった。
スローペースな立ち上がりとなった午前の部を終え、午後巻き返しを図るため選んだのはニンニクのわんさか入ったこってりラーメン。
これでスタミナつけ息子は勉強に励み、わたしはジムで走ってサウナでひとときくつろいだ。
一日なんてあっという間。
ぼやぼやしているうち日が暮れる。
夕飯はいらないと家内にメールする。
二男がもうすぐ帰ってくるので家では肉を焼くという。
家内は終日、家で用事し過ごしたようであった。
日曜だからと皆が皆遊んで暮らす訳ではない。
手作りしたというアップルパイの写真が送られてくる。
これぞ平穏無事、円満家庭の象徴と言えた。
よきパパ、よきママ、よき息子。
甘い香りが漂って、わたしたちがそんな家族のように思えてくる。
事務所では終盤追い込みのラストスパートが始まった。
だから夕飯はあっさり目。
特選海鮮丼でヘルシーに仕上げた。
結局、帰還は夜10時。
長男を助手席に乗せ帰途につく。
車中、息子が話す。
先日、西宮北口のマクドで勉強していた。
すると、塾時代の友だちの姿が見えた。
その友だちは六甲の同級生らと勉強していたが、勉強というよりもただ単に雑談しているだけだった。
続けて息子は言う。
西大和の高3ではあり得ない。
誰かが喋っても、そんなことしている場合かと互いが注意を促し励まし合う。
たとえば学校で誰かが居眠りしていたら、必ず友だちが、がんばろうと声をかけて起こしてくれる。
彼のクラスの顔ぶれが目に浮かぶ。
今だけでなく、ずっとこの先も彼らは助け合い良い影響を与え合うのだろう。
6年の歳月かけ素晴らしいクラスを作り上げた先生に感謝せねばならない。
引き続き、かつての塾の友だちの話が続いた。
手が届かないほど優秀だった彼は東大寺に進んだ。
最近、たまたま駅で見かけて近況を報せあって驚いた。
もう勉強する気がしないので、受験勉強をせずとも通るそこらの大学を友だちは受けるということだった。
そんな話を聞いて親として思う。
いろいろあるが、すべてが他人事ではない。
遠い誰かの話がいつなんどきうちの話になっても不思議はない。
手が離れたと喜ぶのはまだまだ早く、依然わたしたちは目下子育て真っ最中という渦中にあるのだった。
日曜夜、家でゆっくり家内の二万語に耳傾けたいとも思ったが、もう遅いのでお酒も飲まずさっさと横になった。
親であるという奇跡の時間がまだまだ続く。
それを思う存分味わい尽くそうと武者震いを覚えるからか、しらふだからかなかなか寝付けない夜となった。