遅くなったので事務所前にある居酒屋で夕飯を済ませることにした。
順調な滑り出しの月曜日であったが、ちょいとばかり異変があってちびちびと飲みつつそれについて考えた。
午後のこと。
電話で話しているときふいに不整脈が生じたのか息苦しくなった。
動悸が激しくなっておさまる気配が全くない。
そこらを歩いてみるが動きと鼓動が合致せず、苦しいという感覚がじわじわと押し寄せてきて居ても立っても居られない。
同じことが去年の1月にもあった。
夕刻、薄着のままジムで走って冷えを感じ、直後、心臓が変な風に脈打ち続けることになった。
不調に喘いでそれが夜まで続き、大げさではあるけれど死をさえ覚悟した。
そのときは事態を打開しようとジタバタした。
空腹が原因と考え食事に出て、冷えが原因ではと疑い風呂に入った。
しかし、何の足しにもならずむしろ逆効果であったのかもしれなかった。
だからこの日はおとなしくした。
隣の薬局で救心を買って2粒のみくだし、デスクにうずくまるようにして回復を待った。
やはり安静にしているのが最善。
二時間ほどで元に戻って、心に沁みた。
普通の状態のなんとありがたいことだろう。
そうした午後の場面を振り返りつつ、もし何かあればどうなっていたのだろうと考えてみる。
死ねばもはや当事者ではないのでそれまでのことであるが、もし何か後遺症が残って身体の自由が利かなくなったら深刻だ。
競走馬は骨折すれば安楽死が待っている。
それと同じ。
旺盛に働けているから尊厳が保て、胸を張って毎日を過ごすことができている。
だからもし働くことはおろか動くこともままならないとなれば、こんな惨めなことはなく情けなく涙も涸れて生き地獄、いっそ安らかに、と思い詰めるのもやむを得ないことだろう。
そんな考えがよぎったとき、がっかり落胆し嘆息する馬主の顔が頭に思い浮かんで戦慄のようなものが走った。
まだまだこれから、これからが人生で最良の時間。
ネガティブな思念を振り払い健康に生きることを気合一発決意して最後にチキンラーメンで月曜の夕餉を締め括った。