朝一番からたこ焼き天むすだけでなくまたカツサンドだけでなく牛タン弁当まで平らげる息子二人の姿が目に焼き付いていたので、自然、お昼は牛タンを選ぶことになった。
昼を過ぎていたのに土曜だからだろうか牛たん喜助は混み合っていた。
待つことを覚悟するがタイミングよくカウンター席が立て続けに空いてすぐさま席にありつくことができた。
家内とともに厚焼八切れ定食を注文した。
分厚く末広がりではち切れるほどなのであろうから縁起がいい。
迷うことはなかった。
ついさっき長男の住まいを後にしたところだった。
家内は荷解きをしさすが母親、床までふきはじめ、わたしはパソコンなどのセッティングを行った。
町に出て暮らしに必要な品をあれこれ買い求め、それが思った以上に骨折りだったので、お腹はぺこぺこだった。
だから八切れ程度など物の数ではなかった。
腹ごしらえを終え、続いては自転車を選ぶ。
ちょうど町のあちこちで桜が咲き誇り、新たな生活の地を自転車で疾駆する長男の姿が浮かび、その胸に吹き込む春の風を思ってわたしの胸も膨らんだ。
そして布団。
布団など敷ければいいのだし被れればいい。
そんな視点でわたしが適当大雑把にチョイスしようとするのを制して、組み合わせや快適さを重視し店員さんの意見を聴きながら家内が品を丁寧に選んでいった。
やはり母。
父とは親身さの種類が異なる。
用事を終えて夕刻前、ようやくホテルにチェックインした。
まずはプールで泳ごう。
家内と意見が一致した。
骨折りで発生した疲労にはプールがてきめん。
7階に降りるとフィットネスジムに長男の姿があった。
トレーナーの指導を受けつつエクササイズに励んでいる。
やはりこの家族は似た者どうし。
荷解きのあと別行動していても行き着く先は同じなのだった。
家内と横並びになって水を切って泳ぎ地上の重力とノイズから解放されるひとときを過ごし、泳ぎ終えてはジャグジーにつかって暮れゆく横浜の空を一緒に眺めた。
そして夕飯で家族4人が全員集合となった。
荷解きのあと二男はひとり銀座に出かけてカリーを食べ、そのあとふと思い立って江ノ島を散策していたということだった。
この夜は高島屋8階のポジリポエナプレを予約してあった。
わたしはスパークリングとワインを選び家内は息子らの意見をとりまとめ各種前菜、各種ピザ、そして各種肉料理を頼んでいった。
結構美味しいイタリアンを食べてきた我が家であったが、友人らから伝え聞いた前評判に違わずそのすべてをこの店が上回っていた。
わたしたちはあっさり宗旨替えしここが一番美味いと脱帽しつつたらふく食べた。
みなで帰って、4人で同じ部屋。
修学旅行のルームメイトみたいに夜が更けるまで話し込み、一人また一人と寝入っていった。
最後がわたし。
みながスヤスヤと眠るのを見届け消灯の役目を果たした。