ジムでひとっ走りしシャワーを浴び昼過ぎ、阪急西宮ガーデンズに向かった。
野球を観るなら食べ物が不可欠で、どうせ食べるなら美味しいものがいい。
主食として選んだのが「柿の葉すし」の5種セット。
甲子園球場の座席スペースを考えたとき、かさばるものは不適となる。
柿の葉すしなら場所を取らないし箸もいらない。
続いて「鳥づくし」で塩ベースの焼鳥を数種買った。
ビールを飲むなら焼鳥は外せない。
タレだと服が汚れかねないが、塩なら狭いスペースで手先狂ってもそんな心配がないからお誂え向きと言えた。
惣菜は「RF1」で選んだ。
互い中年であるからカラダにいいものもあった方がいい。
そして締めは、「とんかつのKYK」。
ケーワイケー。
誰だってそう口ずさみ、いつの日にかケーワイケーと口にする日を夢にみた。
トンカツとエッグとエビのミックスサンドを二人分調達した。
買物しつつ思う。
もしわたしが女であればやはり間違いなく「尽くすタイプ」。
顔はともかく、金麦冷やしとくね、というあんな感じであっただろう。
老若男女すべてに惚れられ後輩から慕われ先輩からも頼りにされる安本先生であるから、男が男惚れしてもまったくおかしな話でなく、だから一緒に野球を観るならその笑顔も見たいと思うのがごく自然な感情の発露であって、食の調達に労を割くこともハイ喜んでといった風になるのも当たり前のことと言えた。
待ち合わせは午後1時30分。
初夏を思わせる陽射しがますます強まって気持ちが高ぶる。
好天のもと甲子園の広々としたグランドを眺めて過ごせばそれだけで気持ちスカッと晴れ渡り、おまけにビールをゴクリ飲み干すとなればこれを至福と言わずしてなんと言おう。
それに加えて神の子といったレベルの天才がボールを投げて打って走って捕る。
様々なスポーツ競技が世にあるなか、才能のほぼすべてが野球界に集結している。
奇跡レベルの逸材がここに押し寄せひしめき合っているから、もし例えば2軍の選手でサッカーやラグビーの即席チームを作っても、本家日本代表を脅かすくらいにはなるだろう。
だから1軍スパースター級のイチローや松井稼頭央がフォワードのツートップになればイタリアやドイツ相手でもゴール連発できたのではないだろうか。
そんな話を安本先生としつつ、ドラゴンズのロドリゲスの球が速すぎて目に捉えられず、すげーと惚けたようになって空から吹き下ろす五月の浜風に頬を撫でられるのであった。
野球を観終えてバスに乗りコンビニでつまみを買って、うちの家に寄った。
二男が安本先生に挨拶し初対面だからハグをしてもらい、食卓で向き合って二人で飲んでそれを二男がかたわらから見守った。
安本先生が若き頃を振り返って昔話を二男に語ってくれる。
最終的には医者の道を選んだが、ジャーナリストになりたいという希望もあった。
なるほど、情に厚く根っからの正義漢で国際派。
世界を縦横無尽に駆ける弱者の味方、いぶし銀の国際ジャーナリスト安本秀男の姿が容易に目に浮かぶ。
その他、神戸にある隠れ家的すし屋の話は特筆の耳寄り情報であった。
三千円で珠玉ハイレベルな握りがお腹いっぱい食べられる。
どこの何というお店か。
その答えは宝塚やすもと内科クリニックに行けば容易に得られるだろう。