猫の手も借りたいような状況であったので家内も駆り出し作業した。
夕刻6時過ぎようやく完成をみて家内の運転で帰宅した。
高速を走りつつ出た話題が小さいときの子どもたちのこと。
かつては子らと川の字になって寝ていた。
一緒に寝ようと子らが言うから、まさに子どもが寝るような時間からそれが当然といったように皆で寝ていた。
ほんの少し前のことなのに遠い昔の光景のように思える。
このとき、車窓の向こうに子らの面影を浮かべていたのはわたしも家内も同じであっただろう。
20分ほどで家に着き、ロゼのスパークリングを開け乾杯し、市場で買った刺身を前菜とし、家内が肉を焼く間、わたしは枝豆を食べメインの仕上がりを待った。
マグロもタイもイカも美味しかったが、黒毛和牛には敵わない。
特に28期松井教授が送ってくださる肉は極上であるから、この日のメニューの美味しさには大差がついた。
食べつつ、更に遠い昔のことを思い出した。
家内とはじめて食事したときのこと。
家内は仕草もまじえてもっぱら料理について話した。
そのときの手つきが、まるで猫の手のようであった。
数々の料理がその猫の手から生み出され、子らはぐんぐん大きくなった。
料理は魔法。
いったいどれだけの名品がこれまで生み出されてきたことだろう。
そしてこれからも、どんどん。
猫の手だからといって徒や疎かにできる訳がない。