昼以降電車が動かなくなる。
だから午前中に動くことにした。
わたしはジムに向かい家内はヨガのレッスンを受けに出かけた。
雨は一滴も降らず風もさして強くない。
電車を停めるなど過剰反応にもほどがあると思えたが、わたしたちの日常は電車に従属している。
ダイヤに合わせて予定を考える他なかった。
わたしは11:00、家内は11:15に切り上げ大阪市内から家路についた。
家に帰って昼から飲もう。
家内とそう話が決まっていた。
焼鳥とタタキと手羽先などお酒のつまみを買い求めるため帰途わたしは野田阪神ウイステの鳥清に寄った。
品を注文していると一人のちびっ子が唐揚げ唐揚げと歌うみたいに唱えて店に走りこんで来た。
後ろには柔和な笑顔浮かべる母親の姿があった。
ちびっ子はここの唐揚げに目がないようだった。
300グラムくださいと母親が注文し、店員がトングで唐揚げを一つずつつまんで袋に入れる。
ちびっ子はその様子を注視してひとつ、ふたつ、みっつとこれまた歌うように唐揚げの数を夢中でかぞえた。
だから当然、わたしも唐揚げを300グラム追加した。
電車は混み合っていた。
最終に近い電車であるのだから無理もなかった。
駅に着いて改札に向かう。
と、前に家内の姿があった。
同じ電車に乗っていたのだった。
駅前のスーパーは早々に店を閉めていたのでコンビニに寄ってキンキンに冷えたビールを買った。
シャワーを済ませて食卓につくと既に料理の支度が整っていた。
もちろんそこに唐揚げの姿もあった。
エピソードがあると美味しさが増す。
わたしは家内に唐揚げ少年の話をし、その少年が大喜びで歌って唐揚げにがっつく様子を思い浮かべた。
唐揚げをこんなに美味しいと思ったのは初めてのことだった。
二人の酒宴は盛り上がった。
ビールに続き冷やしてあった白ワインを開けた。
どこにも増して家が快適。
掃除が行き届き空間を広々と感じることができるから呼吸が深くなって心身が芯から穏やかとなる。
いつしか雨脚が強くなり風も音立て吹き荒れはじめたが家の中は平穏そのものだった。
飲み終えてすることがなくリビングで映画を流した。
まもなく家内は寝入ってつられてわたしも寝入った。
映像がほのかな窓明かりとなって眠りを一層深くした。
台風などどこ吹く風。
明るいうちから酒盛りし、早寝を満喫できるなどお盆ならではのことだった。
二男が帰宅するまでわたしたちはスヤスヤと眠り続けた。