土曜明け方、急に秋めいて肌寒く、いつもは開け放つ窓をピシャリと閉めた。
朝食をとる二男に紙面を一枚取り出し手渡す。
この日の朝日新聞に歴史学者ハラリ氏のインタビュー記事が掲載されていた。
AIが支配する世界ではアルゴリズムの精緻さが政治的・経済的な優位性に直結する。
だから民主的な国家よりも全体主義的、独裁主義的な国家の方が力を持ち得る。
人々は一部のエリートと「無用者階級」に分断され、後者はストレスに満ちた暮らしを余儀なくされる一方で、容易に扇動され搾取される。
その兆候はすでに現れている。
これまで世界を成り立たせてきた物語が次々と崩壊し、その真空に「過去への郷愁に満ちた空想」が入り込みはじめ、ファシズムの土壌が形成されつつある。
そして人々は監視され解読され操作される対象となっていく。
そんな時代にあって自分を見失わないためにはどうすればいいのか。
誰もが意識的に考えるべき話であるから、食事代の千円と併せて息子に渡し、必ず読むようにと伝えた。
日常をたまには俯瞰する。
そんな視点を得る上で新聞は役に立つ。
繁忙の日々を過ごすうち日常に埋没しがちであるからこそ大事なことであり、こういったやりとりが息子とのコミュニケーションにもなるから、これはと思う新聞記事を手渡すことは親の役目とも言えるだろう。
肩の力が抜けて過ごせるから土曜は嬉しい。
負荷軽目の用事を楽々と済ませ先週と同様。
ジムを終えて天満に向かい、ヨガを終えた家内と駅で合流した。
向かうは焼鳥の人気店「豆」。
狭い店内のいちばん奥の席で向かい合った。
子らの話で盛り上がり、特にこの日、長男が保護者面談を行うと聞いたから笑いが止まらなかった。
ついこのあいだまで、彼の保護者として何度面談のため学校を訪れたかしれない。
その当の息子が塾で中学生と小学生を教え先生としてその父兄と面談するというから、その立場の差が可笑しくて嬉しく、なんだか頼もしいような思いも込み上がるのだった。
食事を終え、中之島で開かれるお茶会に出るという家内と梅田で別れた。
先日は紅茶、今夜は台湾のお茶が飲み放題なのだという。
スコッチや紹興酒ならいざ知らず、お茶となればわたしの範疇外。
今回ワールドカップでの屈指の好カード、オールブラックス対インビクタスの試合開始に間に合うよう家路を急いだ。