信楽陶器まつりが台風のため中止になった。
やむなく予定を変更し、丹波味まつりが行われる篠山城に出かけることにした。
が、片道3時間以上かかるとナビが言う。
事故が原因で中国道が大渋滞しているようだった。
鶴の一声、宝塚インターを目前にして行き先を変え神戸ベイシェラトンホテルに向かうことにした。
そこで朝ご飯を食べ、予定を練り直そう。
南半球三強の一角スプリングボクスこと南アフリカ代表チームがそのホテルに滞在している。
もしかしたら選手に会えるかもしれない。
家内の考えに異を唱える理由はなかった。
わたしは一路神戸へとクルマを走らせた。
到着は朝の9時。
案の定、ビュッフェに何人かの選手の姿が見えた。
わたしたちは兵庫地産の各種食材を楽しみながら、ネットで南アフリカ代表選手の情報を調べつつその横顔を眺めて過ごした。
2プレート目の料理を選ぼうと家内とともに立ち上がったとき、中心選手であるコルビーがビュッフェに現れた。
家内は迷うことなく歩み寄って話しかけ、引き続き現れた主力級のスナイマンやマルハーバとも言葉を交わした。
シャイなわたしにはとても真似できない芸当であった。
世界的な選手らに気軽に声をかけるなど並みの神経ではできやしない。
彼女には主婦以外他にいくらでも向く仕事がある。
そう思いつつ呆気に取られ、わたしは一歩の距離から写真を撮ってその様子をドギマギ眺めるのみであった。
選手らに続き、帯同する奥さんや子どもたちも姿を見せ始めた。
何か話したそうな感じで家内が腰をあげようとしたので、選手の家族は私人、さすがにわきまえた方がいい、そうわたしは口を挟んだ。
とは言え、ビュッフェ形式。
結局、家内は何人かの奥さんと言葉を交わすことになった。
結構打ち解けて、遊びに誘ったりうちの家にでも招きそうな勢いを感じたのでわたしは真剣に身構えた。
幸い皆がフレンドリーに接してくれたが、場面毎、冷たくあしらわれるのではないかと見ていてわたしは内心ヒヤヒヤだった。
店を出るときには2018年南ア最優秀選手であるデュトイと写真を撮りその奥さんとも写真を撮った。
そんな家内を見て納得がいった。
旅する度に友人が増えるはずである。
支払いの際、5時間分の無料駐車券をもらったので、そこらを少し散歩することにした。
ホテル前のタリーズコーヒーに一人で座っている選手がいた。
黒人で初めてスプリングボクスのキャプテンとなったコリシだった。
選手皆が連れ立って日曜のオフをなごやか過ごすなか彼一人だけが神妙で厳しい面持ちに見えた。
いろいろ大変な立場なのかも知れない。
さすがに家内もそんな空気を察して遠目にするだけで話しかけたりなどしなかった。
ビュッフェでたっぷり食べたので次の行き先はジム。
おのずとそう決まった。
ホテルを後にしてもわたしたちは南アフリカチーム談義で盛り上がった。
ほんの少しであれ選手や家族とひととき接し、好感を持ったし愛着も湧いて出た。
応援しよういう気持ちになるのも自然なことだった。
夜は日本対スコットランド戦。
おそらくよくて惜敗。
だからこのとき、日本が準々決勝で南アフリカと相まみえることになるなど思ってもみなかった。