タコスは具材を詰めてすぐに食べるより一呼吸おいてからの方がおいしい。
その方が全体がしっとり調和し一つにまとまる。
家内の助言に従いつつ味わって、しかし戦況を見守りながらであるから終始身を固くし、折々、家内とともに青息吐息となり勝利の瞬間には雄叫びあげて歓喜した。
一種のジャグリングのようなものであった。
日本代表の変幻自在なパス回しは曲芸の域に達していて随所でスコットランドを翻弄した。
戦術スタイルが似ているので接戦での勝敗を分けたのは、チームとしての練習量の差と言えるのだろう。
勝ったので同じ試合を再び見て、一夜明けともに寝不足。
三連休最終日は食材調達に充てることにした。
向かうは丹波。
不思議なことに高速乗り口までの道中、前日と全く同じクルマがわたしたちの前を走っていた。
この日は途中棄権することなく前のクルマに引き続き宝塚インターから中国道に入った。
上り方面へと走り去る先行車の背を右手に見送り、わたしたちは左にハンドルを切り下り方面へとクルマを走らせた。
小雨降るなか快調に走り小一時間で丹南篠山口の出口付近に到着した。
が、そこで長蛇の列。
トンネルの出口手前でハザードを出し最後尾につけた。
続々とクルマがやってきて、トンネルのなか列が伸びていった。
事故でもあればことであると少なからぬ恐怖を覚えた。
幸い無事故無違反にて列から解放され、まもなく場面はのどかな丹波の町の風景に変わった。
丹波味まつりのため設営された駐車場にクルマを停め、家内とともに城跡へと続く人の流れに続いた。
小雨降って肌寒いが、空気が澄んで心地いい。
城跡前にずらり並んだ屋台を一つ一つのぞきながら歩いて、気に入った品があるごと買って食べた。
篠山牛串、飛騨牛串、猪焼肉、猪フランク、栗ご飯。
ちょこちょこ食べるが気づけば結構な品数にのぼった。
小腹も埋まって、次は買い物。
賑わう市街へと足を向け売り出しとなったばかりの黒枝豆を買い求めた。
もちろん隣近所の土産にする分も忘れない。
それだけで重みずっしりの荷となったのでクルマへと引き返し、買い物の続きは道の駅で行うことにした。
秋の食材を求めてごった返す道の駅にて家内の後に付き従う。
野菜、果物、豚肉、鶏肉、そして栗に新米10kgを買い込んだ。
もちろん父への手土産にする日本酒も忘れない。
残すは牛肉。
クルマで30分ほどの距離。
「こだわりの三田牛、白と赤の芸術」がキャッチフレーズの名店「肉のマルセ」へと足を延ばした。
二男が食べる分だけでなく長男に焼いて送る分を含めて各種牛肉計2kg。
結構値が張るが外食することを考えればかなりのお値打ちと言えた。
家に料理名人がいるとこういう場合、大いに助かる。
肉の準備ができるまでの間、隣接するマルセの露天で牛串を買って家内と食べた。
これで当分食べるものには困らない。
家内は満足気だった。
自宅へと引き返す道中、長男から電話が入って家内が話した。
他愛ない近況について息子と言葉を交わし、その様子から我らが総料理長の腕が鳴っているのが手に取るように分かった。
いつもと同じ。
家に帰ってすぐ、一切休むことなく家内はキッチンに立ちあれやこれやと仕込みを始め料理を作り始めた。
出来上がる度、小皿に分けた料理が差し出される。
それらを味見しつつ、まだ明るいうちからわたしはビールを開けた。

