大阪に住む妹の夫が器用で多才。
いろいろな局面においてとても頼りになる。
大学での専攻は生物学。
語学も堪能で四カ国語を使いこなす。
が、それだけに留まらない。
驚くほど多分野に渡って実践知を備えている。
だから、専門家でもないのに台風で被害を受けたうちの実家の屋根をたちまちのうちに修繕したし、ついでに隣近所の屋根も無料で直した。
男はこうでなくてはならないといった見本のような存在と言っていいだろう。
うちの玄関先でバッテリーが死んで動かなくなったクルマがあって、どう処置したものか、ここ数日わたしは思案していた。
家に動かない車がずっとある。
これは気にしなければ気にならないが、気にし始めると気になって仕方がない。
ふと義弟のことが頭に浮かんだので、兎にも角にも相談してみて、改めて痛感した。
できる男にパスを出せば、瞬く間にボールが巡ってゴールネットを揺らすのは時間の問題。
月曜の午後、待ち合わせの時間どおり颯爽と義弟が現れた。
手慣れた手付きでクルマをよしよしと手当てし、たちまちのうちクルマが息を吹き返した。
後のことをすべて託し、ああ片付いたとわたしは心安らぐのであったが、その一方、道中でクルマがエンストしないか不安もよぎった。
大丈夫?とのわたしの問いかけに、「どうなってもなんとかするから大丈夫」と彼は笑って答えた。
なんと頼もしい。
実際、彼なら何があっても最良の解決策をその場で見出し実践できるに違いなかった。
そこがそこらデスクワーカーという名の机上の空論者とは異なるところで、要はこんな男がいるからこそ世が円滑に回るのだろう。
2019年10月28日、義弟の爽やかな笑顔を残し、とうとうあのイカツイ車が我が家を去った。
このように幸いなこと、うちの家族はみな仲がよく互い助け合って生きている。

