南森町で仕事を終え、家内が近くにいればと思って連絡するが、彼女はすでに家にいた。
残務を片付けまっすぐ帰宅する。
食卓に座り今日もお疲れと家内に言ってひとりハイボールを飲みはじめ、一呼吸の後、食卓に出されたタコの煮物とあじの塩焼きとうずら卵の天ぷらといった和食勢をつまんでまずは小腹を満たした。
続いて赤ワインを開ける。
メニューががらりと変わってチーズやらパテやらといった洋物勢の登場となった。
家内が先日の旅先で通りかかって買ったという、もりウインナーのパテが実に美味しい。
芦屋のメツゲライクスダだと2,000円は下らない品が500円ちょっとだから店主の謙虚な心根が窺えて、感じが良くてうまさも倍増しになった。
で、噂をすればなんとやらで、長男から電話がかかってきた。
バイトの初任給で家族みなにプレゼントを買ったから楽しみにしておいて、ということだった。
その話を聞いて家内は大層喜んだ。
子育てはいろいろたいへんだったけれど、これですべてが報われた。
大袈裟ではなく、まさにそのような喜びようであった。
東京も冷え込んでいるに違いない。
家内はそう言ってアマゾンで毛布を探し、即座、長男にあて二枚組の毛布を注文した。
ちびちびワインを飲みつつ家内とともに昔の写真など眺めていると夜11時前、二男が帰宅した。
彼もパテがかなり気に入ったようで、この日の朝食と同様、バケットに挟んで数個平らげ、その他、ソーセージやらベーコンなども挟んで食べて、その姿を眺めつつ思う。
二男も長男と同じようにいつかバイトの初任給で何かプレゼントを買ってくれるに違いない。
一夜明け、二男の始動は朝の5時。
試合の日が迫る。
だからじっとしていられる訳がない。
今朝もグランドに一番乗りし、フィールドを駆け回るのだろう。
前日急に冷え込みその寒暖差によって、この朝、大阪は濃霧に包まれた。
地表に垂れ込める雲海のなかを走る二男。
そんな図を想像しつつ、わたしも負けてはいられないと起き上がった。
鶏肉の出汁で家内が作ってくれた卵スープに、八重瀬の一味「からさんどー」をふた振りする。
鷲尾先生にもらった一味であるが、そこらの辛さとは比べ物にならない実力派。
気概に富むような辛さと言え、ひと振りすれば血気ほとばしり、ふた振りすれば居ても立っても居られない。
だから、朝、気合いを入れるのにうってつけだった。
気づけばもう10月も最終盤。
月末業務をくぐり抜ければ秋行楽の霜月が到来する。
一年のうちもっとも陽射し柔らかく空気が澄んで風薫る、最上の季節。
あちこち巡って気づけば師走が訪れこの一年もそれで終わるのだと思うとなんだか呆気なく、名残惜しいような気がしないでもない。