わたしがたまに正宗屋に寄るように、家内はたまに旅に出る。
金曜朝、西宮北口のロータリーまで送ってリムジンバスに乗る姿を見送った。
家に引き返しクルマを停めて出勤し、昼からわたしは京都。
道中、大和西大寺駅の二条庵で焼き鯖そばを食べ業務先に向かった。
遠出の日はちょっとした小旅行みたいで、このような地点地点の隙間時間がまま楽しい。
いつもどおり無事つつがなく業務を終え夕刻。
おうすの里に帰途寄って、息子が好む甘めの梅干しを4種買い、台湾高雄から家内が送ってくる写メを眺めつつ電車に揺られ事務所には戻らず直帰することにした。
家内が仕込んだおでんが夕飯として用意されていたが、こんなときは正宗屋であろう。
立花駅で途中下車して、昭和仕様の引き戸を開けた。
金曜だからだろうか冷え込みの厳しい日だからだろうか混み合っていた。
肩狭めて食事するなどまっぴらごめんではあるのだが正宗屋については替えがきかないのでやむを得ない。
両隣がおじさんという席で身をすぼめ、まずはビールでカラダを冷やしてから熱燗に移った。
冷えたカラダに沁み入って生き返る。
家内から写メが届く。
ディンタイフォンで夕飯を食べているとのことだった。
家内が美味しいものを食べると家の料理のレベルが上がる。
この旅で奪取された異国の技とともに各種食材が持ち帰られることになる。
時が時なら家内は遣隋使や遣唐使一行に選抜されたのではないだろうか。
メールでやりとりしつつ正宗屋についてあえてわたしは触れない。
おでん美味しい?と聞かれたので、とてもおいしいと返信したがそれは本当のことだった。
家内のおでんはまたの楽しみとしてゆっくりいただくことにする。
その後も引き続き家内からメッセージが届きわたしはすべてに返事した。
ひとり正宗屋で過ごしていても結局のところわたしの話し相手は家内なのだった。