夕刻、駅を降りると雨脚が強まっていた。
雨に濡れながら急ぎ足で家へと向かう。
途中、スーパーの前を通りかかったとき、後ろから名を呼ばれたので振り返った。
家内だった。
その瞬間に予感したとおり帰宅後はジムとなった。
雨模様の平日夕刻、ジムは人影もまばら。
筋肉を互い褒め合う常連のおじさんらを横目に筋トレして一時間。
まだ運動している家内を促し引き上げた。
家に戻ると家内はいつものとおりひと休みもすることなく夕飯の支度を始めた。
サバの味噌煮で和えたチンゲンサイ、エビとトマトがたっぷり入ったマレーシア風サラダ、いちぼのステーキが食卓に並び、お酒はハイボール。
うまい、うまいと言って食べているとインターフォンが鳴った。
佐川急便だった。
ああ息子の破れた靴かと思って箱を開けて驚いた。
なかに入っていたのは新品の制靴だった。
家内に報告すると、あそうそうと顛末を説明してくれた。
昨日の夜に靴屋から電話がかかってきた。
たまたま在庫があるので新しいのを送るとのことだった。
一昨日とは打って変わって親切で丁寧な対応だった。
聞けば、底がめくれる苦情が相次いで製造元を変えたばかりだったが、それでもまだ事態の大幅な改善がみられないのだという。
一昨日、家内からの電話に対しつっけんどんな態度を取った後、社内の誰かがそれはまずいと進言でもしたのだろう。
しかしこれではうちが図々しいクレーマーみたいで気が咎める。
何かにつけ不平不満を撒き散らし相手を劣勢に追いやって勝ち誇り、あるいは相手の譲歩を無理にでも勝ち取ろうとする輩はどこにでもいて、そんな人種を目にすると決まって物悲しいような思いとなる。
だからうちがもしそんな役回りになったのだとしたら不本意極まりない。
うちとしては、不良品なのではと情報提供と問題提起をしたかっただけであり、要は学校を含めたコミュニケーションの不在を憂いただけのことであった。
今後は、品質向上を図るか値下げするか、あるいはメーカー保証といったものをつけるなどすれば顧客満足度も高まるのではないだろうか。
機会あればそう進言したいが、どこにもそれを伝える場所がない。
学校に窓口を設置し声を集約的に拾うようにすれば親は皆喜ぶはずで、様々な意見が散逸拡散せず学校の危機管理としても都合いいと思うがどうだろうか。

