流す音楽はビリー・アイリッシュのバッド・ガイ。
自分自身の動きが俄然よくなって気がついた。
呼吸を小刻みにすると闘志が倍増しになる。
この音楽を聴くと自然そうなる。
カラダがキレキレになるのも当然だった。
家内が持たせてくれた携行用アルコールで手を小まめに消毒し、手近な窓を開け新鮮な空気を確保しながら一時間ほど運動して家に戻った。
家内が味噌を仕込んでいて、サバの煮付けなどヘルシーな手料理が帰りを待っていた。
ジャック・ダニエルのソーダ割りを食卓に添え、夕餉の箸をとった。
『正直不動産』という漫画が面白い。
家内がどこかからそう聞いてきた。
アマゾンで探して全巻購入したそのとき、二男が帰宅した。
この夜、家内の計らいで電話会談が行われることになっていた。
今年合格を果たした長男の友人に二男が電話をかけ会話が始まった。
数学の問3と問4はどう攻めたか。
そんな具体的な話から、現役当時の反省点といった総括的な話まで含め真剣な討議が繰り広げられた。
質問の着眼点がなかなかのもの。
二男は二男でいろいろと考えているのだと傍で聞いて十分理解できた。
返ってくる助言はすべて的確で明瞭なものだった。
痒いところを見事に射抜いて、質問を重ねるごとに二男の認識は高みへといざなわれた。
大いに参考になる数々の話に加え、古文については西大和のテキストがダントツに秀逸だとのことで、それら参考資料も送ってもらえることになったから至れり尽くせりとも言える電話相談となった。
会話のなか驚かされたのが西大和の担任と校長先生の話。
各々計3回ずつ予備校を訪れ講師らと話をし、その後教え子らを食事に連れて行ってくれたのだという。
生徒のためになるなら迷いなく腰を上げる。
そういった点で一貫していて、そんな積み重ねがものを言う。
塾の先生が西大和を推すのも当然といった話かもしれない。
まだ他に何人かとの電話会談が予定されている。
一年を通じ長男の友人らが二男のブレインになってくれるようなものであるから有り難い。
持つべきものは友。
そういう意味で長男だってなかなかのものである。
家に遊びに来た子とは直接話せるが、そうでない子とでも家内のママ友を経由すれば話すことができる。
取り次ぐ家内はマネージャーみたいなものと言えるだろう。
わたしとしては、大学受験がどうというより、そんなコミュニケーションが生成することに喜びを覚える。
大阪星光33期の精神科医姜昌勲氏は言った。
ひとりで抱え込まず、何事であっても相談すること。
電話で話すのもそうであるし、会いに行くのもそう。
ちょっとしたコミュニケーションが行き交うことで、空気は澱まず土壌が肥える。
実り多い人生を得るためのエッセンスが二男がするやりとりの向こうに垣間見え、受験がどうのというより根本的な部分でわたしはほっと安堵した。



