どう過ごそうか。
思案した結果、京都までクルマを走らせることにした。
森閑とした地を見つけてそこでジョギングし、クルマの中で昼食を摂り、閑散とした場所で各種食材を買い揃え夕飯は家で食べる。
そうすれば問題となる濃厚接触は回避できる。
そう考えたのだった。
日曜日の午前、京都へと続く名神高速はたいてい混み合っているが、この日見かける車両の数はまばらであった。
京都市内も同様。
至る所まるで一昔前の正月といった趣きを帯びていた。
しかしその静謐は、立場によって全く異なる捉え方となるのだった。
北野白梅町、長文屋の店主はこう言った。
「たいへんなことになってしまった」
地元客によるものではなく観光客で潤っていた商いはことごとく壊滅的な打撃を受けているとのことだった。
閑古鳥が鳴く。
そんな茶目っ気ある表現ではとても言い表せない深刻な状況に観光の名所は覆い尽くされていた。
神宮丸太町のベーカリーLANDで昼食を買い、宝ヶ池公園の駐車場にクルマを停めてわたしたちはパンを分け合って食べた。
眼前には春風に吹かれてたなびく満開の桜、頭上にはその風に乗って舞うトビの一群、向こうには比叡山。
そんな景色を眺めながらであるから手にするのはパンであっても贅沢な食事と言えた。
食後、引き続きそれら景色に眺め入りつつ、池の周りを家内と走った。
人の出はチラホラといった程度。
桜のほか山ツツジも最盛期を迎えていて色鮮やか発色し、それら色彩の方がはるかに賑わっていた。
走り終え、カラダが冷えぬようすぐにクルマに乗り込み帰途についた。
もと来た道を引き返す。
鴨川を渡り京都御所と北野天満宮の前を過ぎ、用事は最小限にとどめた。
とようけ茶屋で豆腐を買い、名店にし田で焼肉とホルモンを買い込むだけにして夕刻を前に京都南から高速に乗った。
家に着いてあれやこれや用事を済ませ、夕飯とする肉をベランダ焼いた。
食卓に並んで肉を分け合って、思わず夫婦して声が漏れ出た。
それほど美味しい肉だった。
二男にも食べさせなければならない。
善は急げで、わたしは再びベランダに出て、夫婦の分も含めて追加で肉を焼いた。
可能である限り、細心の注意を払いながら何とか日常を過ごしたい。
が、どうやら非常時が迫っているようである。
また来週も夫婦で肉を買いに行けるだろうか。