作った料理の写真を家内が長男に送る。
即、長男から彼が作った料理の写真が送り返されてきた。
東京で長男が自炊をはじめ、いつのまにやら家内が師範のような存在になった。
それで素人芸のレベルから離陸して日に日に長男は料理の腕を上げ続けている。
健康を第一に考え、おのずと素材にもこだわるから身につきつつある料理心得は一生モノと評価できる。
家内と長男のやりとりを傍で眺めてつくづく思う。
受け継がれたなか最大のものは、レシピそのものや小手先の技術や手順といったものではなく、手間を惜しまない料理スピリットと言えるだろう。
このままいけば、長男もいっぱしの料理人という域に達するに違いない。
だから当然、二男もそうなる。
そして二人の料理のハイセンスは、おそらくそこらものぐさな主婦のレベルなら軽く凌駕するはずである。
自炊できるように仕込もう。
子育てにおいてそんなことは考えたこともなかった。
だから、二人が料理を厭わぬ男に育ったことは思わぬ副産物と言えた。
この日の夕飯。
前菜はカツオのたたきとアジのたたき。
家内が焼いた手羽先がメインで実に美味しい。
わたしは一気に8個も食べた。
そしていつものとおり締めはトリュフオイルの風味が効いたサラダ。
食後、わたしは新聞を読み、家内は大画面にYouTubeを映し出した。
ジムやヨガに通えぬ代わり、Amazon Fire TV Stickがその代替をリビングに出現させる。
世界中の様々なダンスシーンが画面に現れては消え、それに合わせて変幻自在、家内が踊った。
わたしから見て画像が左で、家内が右。
ダンスの非対称が可愛らしくて面白く、わたしは新聞を読むどころではなくなった。
最後にはBLACKPINKとBTS。
彼女彼らは凄まじく、わたしも画面を注視した。
家内は元気があり余り、わたしは神経張り詰める場面が多く疲労気味であった。
それで久々、家内の耳つぼマッサを受けた。
肩にのしかかっていたものが全部取り払われ、カラダが温まって楽になった。
だからそのままスイッチが切れたみたいに、わたしは寝入って完全無欠な眠りに落ちて、次に気づいたときには朝になっていた。
きちんと毛布がかけられていたが、全く何も覚えておらず、耳つぼを受け始めて以降の記憶は無であった。
疲労とともに、意識のなかの老廃物もすべて洗い流されメンタルが新品に取り換えられた、そんな爽快感に満ちた朝であった。
耳つぼマッサ、恐るべしである。