KORANIKATARU

子らに語る時々日記

ある日曜日の記録

朝の武庫川をひとり走って自宅に戻った。

 

晴天の日曜日。

昼からベランダで肉を焼く。

そう予定していたが、届いたのは七輪のみで、網と炭はまだ発送もされていないと分かった。

 

このご時世、大勢の人が集うかもしれないコーナンに行くのは控えた方がいいだろう。

それに緊急事態宣言が全国に拡大されたばかり。

三密を避けるにせよ他地域を訪れるのも憚られた。

 

つまり、日曜午前の段階で「すること」がなくなったのだった。

会話は行き場を無くし、炭と網を巡った。

 

日曜に届かなければ意味がない。

Amazonで頼んだわたしの落ち度。

風下に置かれ言葉の伸びが異なるから劣勢。

逃げ場なし。

 

そのときインターフォンが鳴った。

郵便屋さんが携えていたのはソウルからの国際便であった。

 

家内の友人がマスクを送ってくれたのだった。

 

医療用のマスクは親族宛を除き国外発送できない。

とのことで代替品が箱詰めされていたが、試しにつけてかなりのクオリティであることが分かった。

新型コロナ対策については現時点では向こうが上手。

ありがたい贈り物と言えた。

 

家内がお礼のメールを送っている間隙を縫い、わたしは家を出た。

ちょうどタイミングよくゆうゆう窓口に持っていかねばならない荷物があった。

外出の口実としてそれで十分だった。

 

荷物の中身は手作りマスク。

家内が隣家の奥さんと一緒にこしらえた力作で、かなりの出来栄えであった。

 

それを双方の両親と家内の友人あてに詰め、その他の荷物もあったから、とてもポストには入らないし、善は急げ。

こんなときにゆうゆう窓口が役に立つ。

 

ホームで待っていると、空っぽの電車がやってきた。

北新地で降り中央郵便局を目指すが、どこを見渡してもほぼ無人。

 

異界に迷い込んだようなものであり、世界が終わったといったもの寂しい感覚がつきまとうのもやむを得ない話だった。

 

郵便局のなかだけは賑わっていた。

荒野で人里を見たような安心感が込み上がったというのは本当のことである。

 

無事、荷物を発送するこができほっとした。

きっと喜ばれるに違いない。

 

そこからわたしは事務所に向かった。

 

どこを見渡しても手狭な日本家屋。

家で過ごせと言われても、そこが最も息苦しい。

そんな人が大勢いるに違いない。

 

家とは別に事務所があって幸い。

着くなり窓を開け放ち扉も開けたままにし、春の陽気が吹き込むにまかせた。

事務所であるからそこで軽作業に勤しむが、羽を伸ばしているも同然のことだった。

 

テイクアウトの寿司で昼を済ませていると、上の階の人が通りかかり顔をのぞかせた。

 

距離を十分に空けて2、3言葉をかわして思う。

家より職場。

そう思う人はやはり少なくないのだろう。

 

ゆっくりと時間が経過し、目にもまばゆい春の陽射しが徐々に和らぎいつしか外より中の方が明るくなった。

 

たまに一人で過ごす日曜も悪くない。

夜はコンビニの惣菜をつまみに選び、白ワインを飲みつつNetflixで『愛の不時着』を見始めた。

 

実におもしろく、人気を博している理由が出だしで分かった。

結局、第一話に続き第二話まで見て、そこでこらえて続きは明日以降に持ち越すことにした。

 

帰途、風が吹けば桶屋が儲かる、そんな言葉が頭に浮かんだ。

肉が届いてわたしはコンビニの惣菜にありついた。

 

送られた善意も受け手の事情によってはかき消える。

世の不思議を学ぶような思いとなりつつ、この日郵便局から送った善意が喜びをもって迎えられることを願うような気持ちになった。

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2020年4月19日 息子の朝昼
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2020年4月19日 手作りマスクとソウルから届いたマスク
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2020年4月19日 ひと気のない北新地地下街

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昔の4月19日 2018年 天満 スフィーダ