ゴミ出しはわたしの役目。
朝、公園から吹き寄せる涼風に初夏の匂いが感じられ、4月も終盤、まもなくGWなのだと気づくことになった。
人の都合とは無関係、季節は着実に巡っているのだった。
4月に入って季節の風物詩とも言える行事がことごとく中止になった。
時の流れにきたした断絶と空白に、ふいに初夏の香が巻いて満ち、止まった時計が一歩遅れて動き出した。
週はじめの月曜日。
この緊急事態宣言下、家内の事務所仕事を極力減らしている。
その分、家内は料理に励む。
この日も朝から塩こうじに続き醤油こうじも作って、これでうちの食事の美味は倍に増した。
それだけではない。
先日届いた小夏の皮も味わい尽くす。
苦味を取り除きてんさい糖で煮て乾かし、同時進行で隣のコンロでは竹の子が煮られ、旬の香りがキッチンから立ち昇った。
その他、若ゴボウと京都とようけ茶屋の揚げでキンピラが作られ、玄人好みな品だけでなくスタミナ食もラインナップに名を連ねスンドゥブチゲも仕上がった。
カラダにいいものだらけ。
まもなく夏。
どんとこい。
体内時計が息を吹き返し感覚澄んで、季節感あふれる食が背を押し気持ちはすっかり夏を向いた。
その後、家内はスーパーに出かけまた大量に食材を買い込んだ。
更に続々と料理が作られることになる。
思えば、かれこれずっとそうだった。
結婚当初、共働きだった頃も仕事を終えていち早く家内が帰宅しキッチンであれやこれや作っていた。
いまも若いが当時はもっと若かった。
若き女房の姿が目に浮かび、脳裏のなか早回しで時が流れる。
家内の料理がまるで敷石みたいにすべての時間に渡って途切れることなく今に繋がる。
時計の文字盤ではなく、うちは料理によって時が刻まれていたのだった。
うちの女房が時をも紡ぐ。
息も引っ込むほどのその発見を息子らに告げずにはいられない。