新型コロナの影響で客先が激減した。
だから残った客先を大事にしないといけない。
そう掃除屋さんは言った。
それで大サービスとなって隅々まで掃除してくれ、頭上高い位置にある棚の上まできれいにしてくれた。
そのような経緯があって家内は棚の上に並べて飾る写真をいくつも手に取ってしげしげと目にすることになった。
掃除屋さんが帰る頃合い、わたしは帰宅した。
夕飯は家内が芦屋アレグロで買ってきたピザ。
赤ワインを開けそれら写真を眺めての食事となった。
お酒が回って、写真の当時と今がまっすぐにつながり家内は感極まった。
棚の上に並べてあったのはラグビー県大会の際の集合写真であった。
大会に向けての練習はほんとうにたいへんだったが息子たちはよく頑張ったし周囲がとてもよくしてくれた。
長男がまともな人間になったのはラグビーのおかげだった。
ラグビーがなければやんちゃ気質が悪い方に出たのではないだろうか。
二男が強く逞しくなったのもラグビーのおかげ。
ラグビーをやってなければ線の細い非力な男になってしまったかもしれない。
そう家内は実感するから写真に深くしみじみとした感慨を抱くのだった。
そしてまもなく二男が帰宅しいつものとおり前の公園で自主トレを始めた。
その様子を眺めてまた家内が感涙した。
赤ワインが涙腺を緩めたに違いなかった。
インターハイ出場を目指し、ひたすら走って筋トレも欠かさなかった。
ひとまわり大きくなった体躯に新ユニホームをまといこの五月、晴れ舞台に立つはずだった。
府大会のグラウンドを駆け回る姿が目に浮かび、公園を走る眼前の姿とに亀裂が生じ、それが悲しいからだろう家内の目から涙がこぼれ落ちた。
と、そのときインターホンが鳴った。
隣家の奥さんが熊本から送られてきたというスイカを持ってきてくれたのだった。
玄関で立ち話をし家内は涙の訳を語り、隣の奥さんは家内を慰めてくれた。
お宅のおぼっちゃんは何があってもいろんなことを乗り越えていく。
そう言われて家内の目にラグビーの写真がよみがえり、家内の目頭はまた熱くなった。