出先から事務所に戻る道中、うなぎ屋の前を通りかかった。
息子の大好物である。
せっかくだからと、うなぎ2尾とキモ1舟を買い求めた。
家内も喜ぶに違いない。
夕刻を過ぎ業務を終えた。
後は自由時間。
好きに過ごして構わない。
仕事後の満足感にひたりつつ晴れやか過ごすから、わたしにとってウイニングランの時間とも言えるかもしれない。
まずはサウナで自らをねぎらって、そしてビールを開けた。
この日の夕飯はコンビニではなくスーパーで選んだ。
いずれにしても美味しくないが、食事ではなく過ごす時間がメインであるから、それで別段困りはしない。
日中、少なからず頭を酷使した。
居座る疲労が時のまにまに漂い出して、ついでに中身も空になる。
時を追うごと阿呆となって解き放たれるこの気楽さがたまらない。
交互に行きつ戻りつ、マンガの続きを読みそしてドラマの続きを眺めた。
マンガやドラマにうつつを抜かす。
そんなことは子どものとき以来。
少し前なら、この退行に咎を感じたはずである。
こんなことをしている場合ではない。
ひとときであれ、そんな強迫観念から自由になったと言えるのであるから誠にめでたい。
余暇の場合は時間の凝縮度が平板な日常と異なる。
僅かな時間であっても、ことが大いに捗って前へと進む。
結局、『鬼滅の刃』を第16巻まで読み『人間レッスン』を第8話まで観終えることができた。
単に楽しいだけでも先に進むと充実感を覚えるから不思議なものである。
これが日中の仕事であれば、どれだけ幸せなことだろう。
ほどよい時刻、事務所を後にした。
耳にする音楽は『梨泰院クラス』のOST。
5月下旬。
普段の大阪ならすでに息詰まるほどの蒸し暑さのはずである。
が、風はいたって爽やかで、肌寒いと感じるほど涼しい。
自粛によって空気が澄んで、その分、気候が昔ながらに戻ったということなのかもしれない。
いよいよ大阪の緊急事態宣言が解除される。
いつか遠い先。
『梨泰院クラス』の音楽を耳にすることがあれば、この帰途の場面と風の匂いを鮮明に思い出すことになるのだろう。