晴れますように。
そんな願いも虚しく、朝になっても雨が降り続いた。
せっかくの日曜であったが武庫川を走ることも、どこか遠出することも諦めた。
家内はリビングでオンラインヨガを受講し、わたしはジムで運動に励んだ。
感染防止のためジムの窓は開け放たれていた。
蒸し暑さが汗腺をゆるめ、汗が無尽蔵にほとばしった。
尋常ではない発汗が、戦意を高揚させた。
筋トレを30分、傾斜の速歩を30分、ランを30分。
内なる獣が解き放たれたようなもの。
いつにも増して気合みなぎり、咆哮するようにカラダを動かし、それが深い喜びを伴った。
今日はゆっくり過ごそう。
赤ワインを買ってきて。
家内からそんなメールが届いた。
ジムからの帰り道、ビッグビーンズに寄り赤ワインと家内の好きそうな食材を幾つか選んだ。
家に帰ると、家内が荷造りをしていた。
長男に何か送るのだろうかと覗き込むと、二男のお古を友人に送るのだという。
家内がミーちゃんだとすれば、友人はケイちゃん。
10代からの無二の友である。
緊急事態宣言下の自粛期間中、家内の断捨離が活発化していた。
二男は日々でかくなり、だから、もう袖を通さなくなった服が結構な数にのぼった。
捨てるのも忍びないと思っていたところ、家内は気づいた。
友人の息子が中一になったばかり。
普通、誰か知らぬ者が着た服など得体が知れず薄気味悪い。
が、うちの二男の着たものなら喜んで、とすぐに話が決まった。
息子が着た服が受け継がれ、こうしてまた二人の絆が深まっていくことになる。
昼食を済ませ、この日も引き続きドラマの時間と相成った。
『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』を第12話から見始めた。
わたしも家内もこの素朴なドラマから大事な何かを学び取っている。
人を思う気持ちというのだろうか。
ドラマを見て楽しく、自身も少しはマシな人間になれるような気がしてくる。
だから飽きずに連日雁首揃え、画面を注視することになる。
まだ外は明るかったが、第13話あたりでワインを開けた。
第15話に及んだところで、二男が帰ってきた。
そこで、ドラマは終了。
息子に優先するドラマなどこの世に存在しない。
明日から学校が平常通りはじまる。
世には学校の再開を忌む者も少なくないようだが、彼はその正反対。
息子の表情は喜びにあふれていた。
なにしろそこには仲間がいて、もはや切っても切れない仲となっている。
つながりがあることは喜び。
大阪星光で二男が学んだ最大のものがそれだと言えるだろう。
二男と語らっていると、長男からメッセージが届いた。
添えられた写真を見ると、そこには西大和出身の男が6人並んで写っていた。
アメ横で食事した後、記念に撮ったのだという。
長男以外の男5人は東大生。
そこに混ざって、うちの息子は何とかのアヒルの子のようなもの。
が、西大和時代の東大1組の大半が東大生になったから、集まればどういった組み合わせであれこういうことが起こり得る。
彼らの結束もまた強固。
中一の頃からの知った顔が、皆いっぱしの青年の顔つきになっていて感慨深い。
お古というのは何も服だけでなく、広義にも解釈し得るものだろう。
彼らのお古なら喜んで。
うちの二男は彼らからも大いに学ぶことだろう。