夫婦共通の趣味といえば食材の買い出し。
ちょうど米がなくなりつつあった。
当てずっぽうで決めた行き先が徳島。
息子を送り出してすぐクルマを走らせた。
このところクルマのなかがカラオケ。
家内の歌を聴いてちょうど2時間。
鳴門に到着した。
昼食のターゲットは「味処あらし」。
出遅れると混む。
そう聞いていたので開店30分前に待機した。
幸い2番目。
11時開店と同時、店は満杯となったが席にありつけた。
しまあじといかそうめん定食を頼み、おすすめの天然物として岩牡蠣、タコ、タコ吸盤と下足の天ぷら、はもの湯引きを単品として選んだ。
すべての選択が正解だった。
向かい合う家内と一口ごとに視線を合わせその美味を絶賛し、鳴門の海の実力をこれでもかというほど思い知ることになった。
次の行き先のあてはなかった。
地元の方が行くような、食材買い出しに適した市場などないか、店の人に聞いた。
「JAえがお」までクルマで10分ほど。
品揃え多く家内ははしゃいだ。
肝心の米は徳島産を選んだ。
「あきさかり」という品種が米の食味ランキングにおいて徳島産ではじめて特Aの評価を昨年得て、今年も2年連続で特Aを維持したというから外せない。
徳島産コシヒカリと併せ、5kgずつを精米してもらった。
続いて、徳島。
徳島そごうが8月末で閉店。
だから、いまセールの真っ只中。
そんなネット情報に引き寄せられ、クルマを徳島市内へと向けた。
しかし、セール品のなかにめぼしいものはなく、息子二人のTシャツをラルフで選ぶことになった。
長男と写メでやりとりし定番のTシャツを一枚選び、二男にはこの夏を制するに相応しいデザインの一枚を選んだ。
ともにチェスト104cm。
男の子というより、彼らはもう男。
服を選んでそう痛感した。
そこからぶらり歩いて市中散策。
天気は曇りで、秋のはじめに吹くような風が絶えないから快適。
通りかかった阿波おどり会館をのぞくと、いま阿波おどりの公演をやっているとのこと。
家内が興味を示したので付き合った。
チケットを買って2階にあがりステージ会場の座席に腰掛けた。
はじめてライブで阿波おどりを目にした。
わたしが知っていたのは、標準的な阿波おどりだけだった。
まるで武道といったごとくに力強い型、バレエのように柔らかく優美な型、リズミカルで躍動感たっぷり、ダンスというしかない域の型など様々あって驚かされた。
男性の踊りがどこかコミカルである一方、女性の動きは艶やかで美しく、魅せられた。
三味線と太鼓の音が間断なく響き渡るなか阿波おどりの起源を思って、150年前からこのように踊り続けた阿波の民に愛おしさが込み上がり、二拍子で踊る小気味よくも清々しい動きのなか身を浸し、うっとり楽しく心地よく、巡り巡って心が強く鼓舞された。
ぜひとも一度、徳島を夏に訪れ阿波おどりを観覧しよう。
家内とそう話し合いながら2階から5階へ移動し、ロープウェイで眉山山頂に向かった。
左手に巨大な吉野川が見下ろせその向こうに淡路島、正面には紀伊半島、右手には四国南部の山々。
そんな日本独特の風光明媚に目を細め、わたしたちは徳島の懐でくつろいだ。
安全運転を心がけ帰阪の途につき、ジムに寄って一汗流してから家に戻った。
仕入れた品で早速家内が簡単な夕飯をこしらえた。
乾杯し夕餉を楽しんでいると、二男からメールが届いた。
模試を終え、今夜、彼はひとりで「孤独のグルメ」。
大起水産のカウンターに陣取ったという。
胸に狼が描かれたTシャツを買った旨を伝え、だから狼のように食べて食べて食べまくれ、とわたしは励ましのメールを送った。