事務所近くのジムで運動し終えたとき、電話が鳴った。
家内からだった。
いま梅田にいるという。
イカリスーパーで待ち合わせることにした。
素早くシャワーで汗を流し身支度を整え環状線で大阪駅に向かった。
軽く夕飯を済ませよう。
そう言う家内に阪急百貨店地下食に連れられた。
簡素な飲食スペースがあり、買ったものをその場で食べることができる。
飲み物を売るカウンターが幾つもあって、ビールにワインにウイスキー、百貨店であるから何でもあって何でも揃う。
これは面白い。
家内といれば飽きることがない。
自分一人ならこうした場所で夕飯を食べようなどと思いつかないし、思いついても実行しない。
そういう意味で家内はやはり彼氏にしたい女子ナンバーワンと言えた。
わたしが飲み物を買い、家内が食べ物を各所から買い集めてくる。
今日あったばかりの塾の懇談の話を聞きながら、思い立っては腰を上げ、飲食物を買い足していく。
手軽で自由。
実に楽しい。
今度はワインをボトルで買って本格的に飲もう。
そう話し合って、飲食スペースがクローズになる午後7時までそこで過ごした。
帰宅し風呂を済ませると心地よい疲労を感じ、わたしは映画を見ながらしばらく寝入った。
会話が聞こえて目が覚めた。
スカイプで家内が英会話のフリートークレッスンを受けていたのだった。
その声を聞きながら、半ば夢でも見るように意識はぼんやり思い出の中へと分け入った。
ちょうど21年前のこの日、わたしたちは結婚した。
その日の真夜中、家内が急に思い立ち、焼肉屋で一緒に冷麺を食べたことが懐かしい。
以来ずっとそんな感じ。
幸せな暮らしが続いている。

