上六の近鉄百貨店で寿司折を3つ買い求め実家に寄った。
母が手料理をこしらえ、父はてっちりを注文していた。
たった3人で食べるにしては、かなりの分量の夕飯になった。
父母のグラスにビールを注いで乾杯。
話は百年スパンで行き来した。
過去についてはわたしが生まれる前のこと、父が幼少だった頃の話であるから1940年代。
未来についてはわたしがいまの父母と同じ歳に達する2040年代。
父子の守備範囲とも言えるこの百年を行ったり来たり、過去については思い出が語られ、未来については夢想が語られた。
気軽にこの百年を行き来して、ああ、たったの百年で登場人物が様変わりしていくのだと何か胸に迫るものを感じ、ほんの少し瞼が熱くなった。
父も飲み、わたしも飲んだ。
やがて話題は孫のことだけに収斂していった。
わたしは息子らの動画をタブレットで父に見せ、父のお酒は更に進むことになった。
まもなく息子の受験が終わり、動画ではなく実物の男子が勢揃いし実家の食卓を囲むことになる。
そのとき百年スパンの尺が伸び、百五十年にはなるだろう。
しかしそれでもたったの百五十年。
その先の話は息子らの子が登場してからということになる。