下宿先を出て商店街を歩いた。
銭湯があったので迷うことなくひと風呂浴びることにした。
上京一日目、住む町が好きになり湯船で思った。
同じ轍を踏まぬよう今回はしっかり勉強しよう。
そう固く決意したところで目が覚めた。
夢の中では初々しい学生だったが、気づけば中年のおっさん。
ああ、夢でよかった。
もうわたしは学生ではないのだった。
そう思って寝床でほっと安堵した。
夢が示唆したとおり、もっとマシな学生時代の過ごし方があったはず。
心のどこかにそんな悔いがあるのだろう。
しかし今となっては過去のこと。
そして今が良ければすべてよし。
だからあれはあれで良かったということになる。
過去は一意ではなく今に応じて異なる意味をまとう。
今が受け入れ難ければ過去は否というものにしか見えず、今が受け入れられるのであればたとえ悔いが残る過去であってもすべてよしと肯定の色に塗り替えられる。
そんなことを寝ぼけた頭で考え、わたしは今現在の幸せを噛み締めた。
今日日曜は家内と食材の買い出しに出かける。
近江牛や近江米を買い求め地元で評判の店で食事する。
草津方面へと向かう車内のBGMは家内の二万語そして歌。
オンライン英会話で様々な国の講師と話すことで、家内は見知らぬ国の情報にどんどん詳しくなっている。
そんな聞きかじりの各国お国事情が二万語となって語られる。
夫婦揃って旅情が募ってやまない、そんなドライブになることだろう。