事故渋滞が原因で車列の流れは遅々を極めた。
西宮山口付近でスポーツカーが大破しているとの情報が入ってくる。
日曜朝から豪快に飛ばしたに違いない。
西へと遠出する全車両が足止めを食ったようなものであるから、その豪快のトバッチリはあまりに大きかった。
常人なら気が遠くなるであろうが、幸い隣が家内。
話して紛れて、渋滞の苦痛が和らいだ。
結局、いつもなら30分で走り抜ける行程に2時間も要することになった。
事故現場を抜け快調に流れ出し30分。
今度は、丹波篠山出口を前に渋滞で足止めを食った。
出口を目指すクルマがひしめき合って、その列は距離にして3.0km。
この3.0kmを抜けるのに1時間半を要したから、苦行であった。
わたしは隣に家内がいたから話して紛れたが、気が狂いそうになった人は少なくなかっただろう。
ようやく丹波の町に出て道の駅を訪れ、また驚いた。
店内は黒山の人だかり。
聞けば、この日が黒枝豆の最盛期。
京都から大阪から神戸から、あらゆる行路を経て皆が丹波篠山を目指すからどこも大渋滞、人で溢れているのだという。
気持ち萎えるが夫婦で励まし合って、肉弾戦のなかに分け入った。
息子に美味しいものを食べさせたい、その一心。
黒枝豆、栗、野菜各種、丹波篠山産のコシヒカリなど買い込んだ。
そして予約時間から3時間遅れで昼食の場所、「ぼたん鍋の奥栄」にたどり着いた。
町の外れに佇む庵で、四方を山に囲まれ空がだだっ広い。
大混雑で滅入った神経が、みる間に回復していった。
田舎屋の座敷に夫婦で腰掛け、鍋の仕上がりを静かに待った。
古き良きあの時代。
緩やかな流れの時間域に紛れ込んだかのようであって、心がたいそう安らいだ。
なおかつ出される料理の何もかもが美味であったから家内はたいそう喜んで、今度は家族総出で再訪しようと話が決まった。
帰途も市街地に入るとどこもかしこも大渋滞だった。
肉のマルセに寄るのは諦めて、高速に乗ることに集中する他なかったが、これはこれでたいそう難儀な話であった。
ほうほうの体で帰宅すると日も暮れて午後6時。
家内は料理にかかり、わたしはジムに出かけた。
筋トレで運転疲れを一掃し、ようやく一息。
家内の手料理を食べ、ビールは一缶。
炭酸水と交互に飲むとお腹が膨れ、一缶でも十分すぎる量に感じられた。
この日、人里離れた地の囲炉裏を囲んで猪鍋を食べ、わたしたちは夫婦なのだとの実感が増した。
長い渋滞も買物も食事も一緒で、話題は子らのことであるからこれまた一緒。
音楽も何もかけない静かな部屋で夕飯をともにし、自分にそんな存在がいるというのが何か不思議なことに感じられた。