結婚前の誕生日、家内がわたしにくれたのは黄色いラルフのシャツだった。
それが20年を超えて長持ちし、20歳になった長男が袖を通すことになるなどそのときは想像さえしなかった。
同じく結婚前。
わたしは家内の誕生日にカットグラスの一輪挿しを贈った。
花が好き、そう聞いていたからだったが、若気の至り。
よくもまあそんなものを選んだものである。
男子校出身者丸出しの青き抒情が蘇って顔が赤くなる。
男子校の男子と異なりたいていの女子はリアリスト。
モノが花瓶と分かったとき。
家内の胸の内はどのようなものであっただろうか。
小っ恥ずかしさで息まで苦しくなる。
家内にとっては期待はずれの象徴。
そんな意味を帯びる花瓶だと思うが、2回の引っ越しを経ても尚、まだ家にある。
黄色いシャツだけでなく一輪挿しもずっと一緒。
子らよりも長く、歩みを共にしていることになる。
時間の立ち位置を変え、視点を移せば見方が変わる。
当初の期待はずれは、不易なものであってこその為せるわざ、時間の経過とともに少しずつマシな何かに変わっていった。
そのような20年であったと思い浮かべるわたしの叙情過多は当時から変わることがない。