大阪の累積死者数が東京を上回った。
そんなニュースが流れた翌日。
父と会う用事があって、万一のことを考えた。
高齢者にこそ実害が及ぶ。
新型コロナについてはそう知れ渡っていて、かつ深刻さが増している。
父の身を案じるのは当然のことだろう。
待ち合わせ場所は屋外。
駅のベンチに間隔を空けて腰掛けた。
近況を話し、父から託された役所の書類などを預かって、わたしは電車に乗ってその場を去った。
時間にして僅か10分ほど。
ほんの数ヶ月前。
炬燵に座って数時間にもわたって酒を酌み交わした。
それがいまや立ち話も同然。
寂しいとは思うが、警戒を怠っては文字通り元も子もない状態となりかねない。
いつになったら終わるのだろう。
春なのか夏なのかもっと先なのか。
全く見通しがつかないのであるから、どのみち考えても仕方がない。
そんな開き直りに近い心情も湧いて出る。
が、ここで阿呆になれば悪い流れに拍車がかかる。
より一層深く、親を思って過ごすいい機会。
そう捉えれば、離れていても親の笑顔が間近に浮かぶ。
ちょっと気をつければいいだけのこと。
最善を尽くそうとの理性が姿を現し不埒な阿呆に引導を渡す。
いずれ遠からずコロナ禍は収まる。
つまりまだまだ親孝行できる余地がある。
そのときを思えば、戦意静かにたぎって腹が据わる。