初日には気がつかなかった。
何人かの同級生が同じホテルに滞在していた。
理系の試験会場は大阪教育大、文系は関西福祉科学大学。
共通テストへの配慮からだろう。
朝の急行は普段止まらぬ大阪教育大駅にも停車することになっていた。
上本町が急行の始発駅であるから試験会場にアクセスする上で都ホテルが至便。
誰が考えても同じ結論に達するであろうから当然と言えば当然の話であった。
二日目に挑む教科は理科と数学。
取りこぼしようがない。
わたしにはそう思えるから初日の英語や国語よりもはるかに安心して構えることができた。
昼前にホテルに着いてチェックアウトを済ませた。
家内を乗せ、わたしがハンドルを握って帰途についた。
寒気が戻って風は冷たいが、それが爽快に感じられた。
家で家内とビールを飲んで、ああやれやれと弛緩した。
ほどなくして息子が帰ってきた。
帰りに梅田でラーメンと焼飯を食べてきたという。
見るからに機嫌がいいので、言わずとも分かる。
無事に試験が終わって夜はオフ。
息子がリビングでくつろぐ姿を久々目にした。
どういう風の吹き回しか、家内がこれを見ようといってNHKにチャンネルを合わせた。
なんと懐かしい。
『ダーウィンが来た!』を見るのは何年ぶりのことだろう。
子らが小さかった頃の定番。
だからこの番組は日曜夜の家族団欒の象徴とも言えた。
まもなく巣立つ息子を挟んで家族三人。
画面を駆けるウサギに目を細めて微笑んだ。
ほっと安らぐ、ふんわりとした空気に夜が包まれた。