帰宅し風呂を終えると、夕飯の準備が整っていた。
わたしは食卓に向かい、家内はこの日2本目のヨガのレッスンに取り組んだ。
難度の高いポーズが決まると、家内が言う。
撮って。
そのたびわたしは箸を置いてiPhoneを家内に向けた。
レッスン後は食卓に並んでワインを開けた。
ここ数日、疲れを感じる。
家内がそう言った。
今日だけでもヨガのレッスンを2本受け、このあとエジプト人講師による英会話が始まる。
早朝に起き息子の食事の支度をし、そのほかの家事もあって仕事の手伝いもする。
疲れて当然。
その場でエステやマッサージなどを検索し、オイルマッサージのいいのがあったのでそれを家内に勧めた。
サポーターが元気であってこそのファイター。
疲労が蓄積せぬよう朝の食事作りはほどほどに。
わたしはそう言うが家内は首を振って持論を述べた。
食がカラダを作って、ココロを整える。
息子のガッツとタフネスの源泉が食。
だから疎かにする訳にはいかない。
そして間もなく英会話が始まった。
エジプト人は浮かれた男であったが、うちの女房はそのはるか上を行き相手を凌駕した。
ワインの残りをひとり飲みながら、1万km先にもビビッドに届くそのハイテンションにわたしは感心するばかりだった。
大半の時間を家内が話し、向こうの話で耳に残ったのはピラミッドが138あるという話だけだった。
そんな話もCoffinと古墳(コフン)を掛けた家内のダジャレによって、かき消えた。
堺市役所の展望台から見下ろせる百舌鳥古墳群について滔々と家内が語り、世界に冠たる古代エジプトの墓群は遠景に霞んでいった。
ここ数日、疲れを感じる。
さっき耳にした家内の言葉は冗談にしか思えなかった。