メンバーがひとり増え事務所の雰囲気が格段によくなった。
助さん格さんの間で会話が弾み、特に昼食時、職場に満ちる平穏がなかなかいい。
その二人が一対となって互いあれこれ相談し、励まし合って一緒に頑張る。
それで仕事に多少なりつきまとう苦も和らぐというものだろう。
数年に一度くらいだろうか。
まれに殺伐として理不尽な強弁が事務所にもたらされることがある。
その対応はまさに汚れ仕事というべきものであり一人で対峙すれば大いに草臥れかつ嫌な記憶がこびりつくが、人数割でシェアできれば一種のレジャー、いろいろ大変であっても後で一緒に笑える楽しい思い出へと昇華する。
仕事後ぶらり立ち寄った正宗屋のカウンターでそんなことを考えていたからだろう。
ビールがやたらと美味しく感じられた。
若い頃、しがない自営業者としてずっと一人で仕事をこなしてきた。
だから単身というサイズが染みついて、飲み屋でも一人。
が、気づけばいつの間にかチームができたのだった。
もちろん立場上、依然わたしは一人のままだが彼らの幸せのため、まだあともう一踏ん張りしなければならない。
そう思うとなんだか嬉しい。
やはり、頑張る理由があってこその人生ということなのだろう。
酔って気持ちが大きくなって、幸福感も膨らんだ。
ひとり正宗屋のカウンターで不敵に笑い、わたしは3本目のビールをグラスに注いだ。