帰宅すると、家族はくつろぎのなかにあった。
ソファにもたれて映画を観る家内と二男の間にわたしは混ざった。
家内は長男の世話を終え、二男は武庫川を走破して、ともにほどよく疲れていた。
だからだろう、リビングで過ごす様子が幸福そのものに見えた。
そろそろ夕飯の時刻。
家内と二男が、さあ何を食べようかと相談をはじめた。
わたしは帰りに夕飯を済ませていた。
二男の受験が無事に終わって、家内に必要なのは何より休息。
ゆっくり休んでもらわねばならず、息子二人の用事以外で手を煩わせる訳にはいかなかった。
クルマを走らせ二人は西宮ガーデンズへと出かけていった。
そこらぶらついて何を食べるか決めるという。
息子二人を東京に送り出すことになり、これで家内の子育て期間に一区切りがついた。
この先は、いわば子育て後休暇。
早めに生んで育てて、宿題をさっさと終わらせたようなもの。
さぞ気分がいいことだろう。
そして、二男が大学4年生になる頃、わたしたちは銀婚式を迎える。
つまり、いま時点、金婚式までの折返し地点にも達していないということである。
まだまだこれから。
楽しみが尽きない。
もし一人ぼっちであったなら、時はただただ素っ気なく風のごとくに過ぎ去ったのだろう。
家族があってはじめて時間にずしりと来る重みが宿り、だから一層、その味わいが濃厚なものとなる。