反省の弁や謝罪は伝えられたが、結論に変わりはない。
人間関係はまれに厄介なものとなる。
後になって相手が人格破綻者と分かっても、一度、関わってしまうとそれなりの手数を経ないと切り離せない。
しかし進行するマイナスをいち早く食い止め、兎にも角にもゼロに戻さないことには平穏が回復しない。
面倒だが一手間かけて関係を絶った。
平素、自分がどれだけ人に恵まれているのか。
解放されて、しみじみと実感することになった。
ヨガの特別レッスンは夜の部。
そう家内が言うので、この夜わたしはひとりで食事した。
酒屋のカウンターでビールを飲みつつ、子らにラインで連絡を取った。
まずは長男。
二、三言葉を交わした。
相変わらず彼はエネルギーに満ちている。
新たな試みがどうなっていくのか。
エピソード量産ということになるだろう。
楽しみが尽きない。
続いて二男。
友だちがいっぱいできた。
そう言うので、わたしは大いに喜んだ。
学業とスポーツ。
その文武両道に達することを大学での主な目的としているが、わざわざ東京に出たのだから、人との出会いについても豊作を期待したい。
友だち全員を大事にするようメッセージを送り、わたしはビールのお代わりを頼んだ。
子らとやりとりすれば、ビールの旨味が倍加する。
だから苦味も一興。
今回わたしは人格破綻者と関わって難儀した。
しかしそれでもそれを楽しむような余裕があった。
わたし自身に「陣地」があるからに他ならなかった。
多くの味方に恵まれたこの陣地は広大無辺で、大陸とも喩えられるだろう。
だからいびつな離れ小島に固執する必要がなく、その小島を物見遊山的な好奇の対象にさえすることができた。
もしそこが主たる居場所で、そこにしがみつかねばならない境遇にあったなら、ただただ辛く苦しく切ないことであっただろう。
息子らは西の地から東へと移動し、いま、盤石の大陸づくりに取り掛かっている。
そんなイメージが頭に浮かんだ。
ビールはますます旨味を増した。