門真での用事を終え夕刻、家内が事務所に戻った。
一緒に帰途につき、あとは夫婦で過ごすだけ。
この日も近所の居酒屋に立ち寄った。
カウンター席に腰掛けまずはビールを注ぎ合った。
ほどよい疲れにビールが沁みる。
喉を伝って全身に歓喜が広がった。
注文は家内に任せ、一品一品味わっていると、自転車を買ったと二男から家内にあてて写メが届いた。
おしゃれな作りではあるが車輪が小さい。
長距離走には不向きに見えた。
写メを見ながら夫婦で自転車にケチをつけ、頭に浮かぶのはそれで街を疾駆する息子の姿。
ありありと目に浮かぶのでついこの間まで家にいたのが不思議に思えた。
そう言えば、長男が東京で最初に買ったのはママチャリだった。
立ち食いそば屋の前で盗まれ、続いて買ったママチャリは酷使し過ぎてぶっ壊れた。
いまはちょっと値の張るマウンテンバイクを乗りこなしている。
自転車に続いて息子らのファッションや髪型について話題は移り、まるで田舎者が都会のスターの噂に興じるみたい、その持ち物の話にさえ熱が入った。
ハイボールをお代わりした頃、酔いも回ってペースが落ちた。
居酒屋の席を立ち、並んで歩いて今後の予定について話し合った。
いいイタリアンがあるらしく、いい焼肉屋があるらしい。
行き先候補は星の数ほどもある。
そろそろ初夏、すだち蕎麦の季節である。
とりあえず明日か明後日は芦屋の土山人。
そう話が決まった。
このように行く場所を変えながら、あちこちで子ども談義に花を咲かせる。
うちの坊主は金太郎と桃太郎。
そんな話を紙芝居にし、いつか将来、弾き語る。
今日は東へ明日は西。
子らを懐に巡業して暮らす。
そんな老夫婦の姿が頭に浮かんだ。