もともとこのGWは家内と一緒に東京で遊ぶ予定であった。
5月3日にまるで惑星直列、家族4人全員のスケジュールが合致するのだからそれ以外の選択肢はなかった。
その日に合わせ旅程を組んでいた。
が、同時期に非常事態宣言期間が覆い被さった。
家族で話し合い、ここはひとつ自重しようとの結論に至った。
それで大阪で過ごす土曜日、することなく事務所で仕事することにした。
実家がまま近い。
それが事務所移転の最大の理由であったが、その他、わたしたち夫婦の暮らしの必需もこのエリア一帯に集中していた。
つまり、今の地へと引き寄せる見えない力が予てから働いていたようなものであった。
後付けでそう気づいた。
午前中を仕事に充て台風飯店で昼をとり、クルマで5分。
御幸の漢方を訪れてそこから高津入口で高速に乗って鳴尾出口まで15分もかからなかった。
直線距離では旧事務所の方が断然近い。
が、クルマを足にすれば新事務所の方がはるかに利便で優っていた。
5月3日、家族揃って新宿伊勢丹で買い物し、昼はホテル、夜は六本木のステーキ屋で食事するはずだった。
久々、子らに会える。
そう家内は嬉々としていたから、がっかり感は隠せない。
しかし、近い内、惑星直列の日はまた訪れる。
今回お預けとなって、夫婦にとって何が最も嬉しいことなのか、改めて再認識することになった。
わたしたちには共通の楽しみがある。
その日を思い指折り数える時点で楽しみはすでに始まっているも同然と言えるから、夫婦はこれからもずっと楽しいということになる。
だから、二人でするつましい夕飯時。
思い出を語り、緊急事態宣言が解除された後の東京行脚の計画を練り、また思い出に戻って、いつしか遠くを夢見て胸を膨らませる。
そんなふうに、子らのおかげ。
新米の初老夫婦の食卓は大いに盛り上がるのだった。