父が先。
誰もがそう思っていた。
だから顔を合わせる度、父本人を含め毎回ピンとこない感情のなかに放り込まれることになる。
残された母を皆で孝行する。
そんな図が残るはずの実家に、父がいてわたしがいて、母がいない。
解けない謎に父子で揃って首を傾げ、ときおりこの現実に呆然とし顔を見合わせる。
ますますもって何がどうなっているのか分からない。
あるべきものがない。
それでキョトンとしてしまう小動物のようなものである。
まもなく夏が終わり、季節は冬へと向かう。
不可解さの深度は増すばかりなのだろう。
実家を後にして駅へと向かう。
牛丼弁当が駅前で売られていて、いったん通り過ぎたが戻って買い求めた。
前日はカレーでこの日は牛丼。
変化あった方が職員も嬉しいに違いない。
そう思って牛丼を片手に提げ電車を乗り継ぎ事務所に寄った。
わたしはすぐに事務所を後にし、出先で昼を済ませた。
今回も冷麺。
他に食べたいものが浮かばないから、かなりの頻度で冷麺を選ぶことになる。
おそらく寒くなっても同様。
冷麺ばかり食べて過ごす冬になるような気がする。