週が明けると忙しい。
日中、怒涛の業務をくぐり抜け、ようやく夜になって憩いの時間が訪れた。
弛緩のクライマックスは寝床での読書。
届いたばかりの「二月の勝者」第12巻を手に取った。
空調が効いて、洗いたてのシーツの感触が実にいい。
生きて在ることの喜びに静かひたっていると電話が鳴った。
時刻は夜10時半。
長男からだった。
ラグビーの練習を終えたばかりとのこと。
いつにも増して声が弾んでいる。
近況を報せる声に勢いがあって、強く頼もしい。
意欲高く彼は様々なことを企て、そしてカラダを張って試みる。
向かっていく男であるから積もる話はどれもこれもが感興をそそってやまない。
わたしは言う。
その調子、その調子。
鼓舞して電話を切って、実はわたしが鼓舞された。
だからなかなか寝付けない。
二男ともさっき話したばかりだった。
彼には彼で強い思いがある。
そして彼もまたただ思うのではなく実際に挑みかかっていく。
老婆心からあれこれ口出ししたくなるが、そんなことをすればせっかくの経験に水を差す。
だから一歩の距離を置いて黙って見守る。
きっとうまくいくに違いない。
もし万一、完全な形でその組成が実現できなくてもそれが次の起点になればよく、学んで得ることは大であり、将来どんな仕事をするにせよ糧となる。
長男と二男を東京の地に放ち、長短様々なスパンで若きチャレンジ精神が雄叫びをあげる。
遠く関西の地にて老親はじっとその様子に目を凝らし耳を澄ます。
手近な日常がわたしにとっては全世界も同然で、平々凡々たる毎日は波立たぬ川の流れを前にするようなものであり、もはや目に馴染んで至って穏やか。
時折、その水面を割って勢いよく息子二人が姿を現す。
その瞬間、景色が一変し、一気にすべてが活気づく。
これで睡眠不足になるのであれば本望とすべきだろう。