早朝、寝床のなか。
目が覚め、徐々に意識が起動していった。
前日マッサージを受けたからだろう。
快調と感じた。
そろそろ起きよう。
そう思いつつ、ふと考えた。
はい、ここまで。
もしいま唐突に人生終了の時を告げられたとしたら。
半睡半醒のまま想像してみた。
別段悲しいとは思わない。
十分飲んで食べ、楽しんだ。
痛くも苦しくもなく永遠の熟睡へと迎え入れられるのであれば、それも悪くないといった気がした。
が、続いて仕事のことや家族のことが頭に浮かんだ。
周囲は慌てふためくに違いない。
それを思えばとても暢気に熟睡を決め込んでいる場合ではない。
熟睡への憧憬はたちまちにして消え去って、心穏やだった半睡の意識が無念一色といった寒々しい寂寞に塗り替わっていった。
死に際し、もし時が無となるのであれば最後の瞬間が永続するということだってないとは言えない。
意識終幕の裏表紙がきっちり閉じられぬまま永遠に放り出され、かつ手の施しようもないとすれば、そのもどかしさは恐ろしいほどのものだろう。
そんな無念に肝が冷えたところで、わたしは勢いよく起き上がった。
今日は可燃ごみの日。
そそくさと家中のゴミをかき集め、町内所定の場所に置いてカラス除けをしっかりかぶせた。
朝いちばん、役目を果たして気持ち晴れやか。
この時わたしははっきりと生の側にあった。
向こう側でゆっくり眠るのは、用事がすべて尽きてから。
強くそう思った。