甲陽出身者は頭の回転がめちゃくちゃ早い。
印象論の域に過ぎないが、そう実感している。
この日の午後、対する院長は甲陽出身の方であった。
話にスピード感があって、ぼーとしてしまうと置いていかれる。
だからアクセルを踏み込み精一杯の出力で追走するということになる。
面談は二時間を超えた。
終えて、短距離ダッシュを繰り返したような体力気力の損耗を覚えた。
心地いい疲労感にひたって放心のときをしばし過ごし、そして夜。
たまたま次も甲陽出身の院長とのミーティングが控えていた。
チョコを頬張り脳に燃料を送り込んだ。
相手は変われど甲陽であるから同じこと。
負荷強めのトレーニングのようなミーティングは一時間に及んだ。
めいっぱい頭を使うと腿が張る。
久々そんな症状を自覚して思った。
この程度で腿が凝るなど普段頭を使わず怠けている証拠に他ならない。
まだまだわたしは発展途上、修行が足りない。
若きボクサーが階級をあげて自己を最強化していくように、わたしも更なる精進を自らに課さねばならないのではないだろうか。
刹那な安楽に安住しても積み上がるのは自己懐疑だけであり、燃焼感を伴う求道のなかにこそ幸せが満ち、かつ、周囲にもたらすものも夥多となる。
疲労を押し除け前に躍り出た高揚感がこの気づきの正しさをはっきりと裏付けていた。