朝5時、家内が誰よりも先に起き朝食の支度を始めた。
家庭教師のバイトが10時から。
だから朝6時半には出発しなければならない。
ひとりの東大生がそう言ったから、早朝からの準備となった。
朝食はセルフ・サンドイッチ。
手間はさほどではなかったがそれなりの準備が必要だった。
具材のひとつである特製カレーは隣家の奥さんがこの日のため差し入れてくれた。
料理を作っては日頃からおすそ分けしてくれ、家内をちょちょく買物や食事に誘ってくれ、ほぼ毎日連絡を取り合う。
ご近所さんというより家内からすればかわいい妹、向こうからすれば頼りになる姉といった関係と言えるかもしれない。
朝6時前にはみな元気に起き出して、テキパキと身支度にかかった。
洗濯し乾燥機にかけた服に各自が袖を通す。
その様子を見て思う。
みな一様に質素な装い。
背景を聞けばかなりのレベルのご家庭と窺えるが、だからこその質素シンプルと言えるのだろう。
身につけるものについても野放しにされる訳ではなく、それが観念として文字通り「身につく」から、しっかりとした思想が不可欠。
見識ある家庭の装いとはなるほどこのようなものかととても参考になった。
明るく笑って皆が朝食にぱくついて、あっという間に出発の時間が訪れた。
朝6時半、皆が玄関前に集結した。
一糸乱れぬ素早い動きは合宿の成果だろうか。
朝の街路を談笑しつつ、彼らは駅へと向かった。
1人は京都へ、4人は東京へ。
にぎやかな背を見送って、寂しいとの思いが一瞬よぎるが、思い直した。
彼らは必ずまた戻ってくる。
そう思えば楽しい。
その日を首を長くし待つことにしよう。