京阪からJRに乗り換える際、京阪モールの地下食に寄った。
風やわらかな日暮れ時、かつてなら飲み屋ののれんをくぐったであろうが、いまは飲まない身であり、かつ夕刻の家事を担う身でもある。
家に持ち帰る食の調達が何よりの優先事項だった。
牛肉と卵が必須。
それに加えて、その日の目玉となる何か特筆の品を選ぶことになる。
それが楽しい。
阪神百貨店と同様、京阪百貨店にも刺身の切り落としが同じ値段で並んでいた。
これがあれば結構上等な海鮮丼が出来上がる。
二盛り選んで自分のための仕入れは完了した。
続いて家内のための食材を物色し、視線を巡らせると生牡蠣と目が合った。
家内がいま飲んでいる白ワインと相性バッチリだろう。
目に浮かぶ笑顔に促され、手に取った。
そうそう、これを機に息子らに伝えておかねばならない。
牛肉、シャインマスカット、メロンとスイカ、さつま芋、牡蠣、うなぎ、スモークサーモン、黒枝豆、各種チーズに赤白のワイン。
母の好物としてはこういったところを押さえておけば及第点は確実である。
帰宅し米を炊き風呂を洗い洗濯機を回しと用事を済ませ、自室にて読書しながら家内の帰りを待つ。
今夜の反応はどうであろうか。
その昔、子らの帰りを待ちつつ家内は楽しげに食事を作った。
子らが食べ始めるとその様子にそれとなく目を注ぎ、お代わりとの声が発せられば小さくガッツポーズした。
その気持ちがいま分かる。
まもなく家に帰ってきて、きっと喜んでくれるはずである。
今夜わたしも小さくガッツポーズし、なるほど、喜ばれることは嬉しくて、明日もどこか地下食をウロウロすることになるだろう。