これも忘れぬ内に書いておこう。
日曜日、第二阪奈道路をくだっているときのこと。
ある人の話題になって、わたしは批判めいたことを口にして勢いづきかけた。
助手席に座る父が静かに言った。
白と黒の間でやめておけ。
それで気づいた。
うっすらグレーであっても、気分次第で拭き拭き磨いて真っ白にし、あるいは、塗り潰して真っ黒にする。
なるほど、わたしにはそんな癖がある。
だから、もっともらしいことを語りながら、かなり恣意的に誰かを上下させて話し、まれに伝わるところが実像と乖離する。
リアルな世には真白な人も真黒な人も実在せず、白と黒の間で各人それなりの調和が保たれている。
それを随意に両端のどこかに持っていこうとするのは確かにたしなめられるべき悪癖に違いない。
長年生きて身に沁みついたことなのだろう。
父の言葉はわたしの身にもしっかり沁みた。
そしてこの先様々な場面でこの言葉を思い出すことになるだろう。
たとえばもし子らと真白と真黒について議論することがあれば、どこにいようとこの言葉とともに父が姿を現すことになる。